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コラム

建築物省エネ法の概要及びその規制措置(省エネ適判と届出)について

1. 建築物省エネ法の概要

平成27年(2015年)7月に平成27年法律第53号「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下「建築物省エネ法」)が制定されました。建築物省エネ法は大きく規制措置と誘導措置に分けられます。規制措置は300u以上の新築及び増改築を行う場合に適用され、特に非住宅建築物で2,000u以上の新築及び増改築を行う場合は基準適合義務があります。誘導措置には基準適合認定・表示制度と性能向上計画認定・容積率特例があります。

建築物省エネ法は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(以下「旧省エネ法」)第5章の「住宅・建築物分野」に規定されていた省エネ措置の内容の届出や住宅事業建築主に対するトップランナー制度などが移行され、新たに適合義務や大臣認定制度等が措置されたものです。一方、旧省エネ法で規定される修繕・模様替え、設備の設置・改修の届出、定期報告制度については平成29年3月31日をもって廃止されました。

2. 建築物省エネ法における用語の定義

はじめに、建築物省エネ法における重要な用語の定義を記載します。

●「特定建築物」(建築物省エネ法第11条)
非住宅部分の床面積※が2,000u以上である建築物をいう
●「特定建築行為」(建築物省エネ法第11条)
特定建築物の新築、増築もしくは改築(増築又は改築する部分のうち非住宅部分の床面積(*)が300u以上であるものに限る)または特定建築物以外の建築物の増築(増築する部分のうち非住宅部分の床面積(*)300u以上であるものであって、当該建築物が増築後において特定建築物となる場合に限る)をいう
●「特定増改築」(建築物省エネ法附則第3条)
特定建築行為に該当する増築又は改築のうち、当該増築又は改築に係る部分(非住宅部分に限る)の床面積の合計の増改築後の特定建築物(非住宅部分に限る)の延べ面積に対する割合が1/2以内であるものをいう

(*) 外気に対して高い開放性を有する部分を除いた部分の床面積

建築物省エネ法は棟単位で規制されます。敷地内に複数の建築物があり、その延べ面積の合計が2,000uを超えたとしても、それぞれが2,000uを超えない新築、増築、または改築であれば規制の対象とはなりません。

3. 規制措置

(1) 適合義務(省エネ適合性判定)(建築物省エネ法第11条)

建築主は、特定建築行為をしようとするときは、当該特定建築物を省エネ基準に適合させなければなりません。また、本規定が建築基準関係規定とみなす(同条第2項)ことにより、建築基準法に基づく建築確認および完了検査の対象となり、基準に適合しなければ建築物の工事着工や建築物の使用開始ができません。

(2) 届出(建築物省エネ法第19条)

建築主は、適合義務対象に該当するものを除く床面積(*)300u以上の建築物の新築、増築、または改築をしようとするときは、所管行政庁に届け出なければなりません。基準適合しない場合は、必要に応じて所管行政庁が指示・命令をすることができます(同条第2項)

(*) 外気に対して高い開放性を有する部分を除いた部分の床面積

4.適合義務又は届出の適用除外となる建築物(建築物省エネ法第18条、第22条)

適合義務(省エネ適合性判定)または届出の対象となる建築物のうち、次の条件を満たす建築物は適合義務等の適用対象外となります。

  1. (1) 居室を有しないこと、又は高い開放性を有することにより空気調和設備を設ける必要がないものとして政令で定める用途に供する建築物
  2. (2) 法令、又は条例の定める現状変更の規制、及び保存のための措置、その他の措置がとられていることにより省エネ基準に適合させることが困難なものとして政令で定める建築物
  3. 仮設の建築物であって政令で定めるもの

(1)は建物全体として以下の@またはAのいずれかの用途に該当するものです。なお、ここでいう「用途」とは確認申請書(第四面)に記載する用途(建築物別の用途)です。建築物別の用途が適用除外用途のみで構成されていた場合、全体として適用除外の対象になります。ただし、適用除外用途のみで構成されている場合でも、その建物の室の用途や構成によっては適用除外の対象とはならない場合もありますので、特定行政庁への確認を行うほうがよいでしょう。

@ 居室を有しないことにより空気調和設備を設ける必要がない用途
イ. 物品(機械等を含む)を保管するもので、保管する物品の性質上、内部空間の気温・湿度等を調整する必要がないもの。
ロ. 動物の活動のためのもの
ハ. 人が継続的に使用することのない、移動のためのもの
A 高い開放性を有することにより空気調和設備を設ける必要がない用途(*)
イ. 観覧場その他これらに類するもの
ロ. スケート場、水泳場、スポーツの練習場その他これらに類するもの
ハ. 神社、寺院その他これらに類するもの

(*) 壁を有しないことその他の高い開放性を有するものとして国土交通大臣が定める用途に限ります。

5.高い開放性を有する部分

高い開放性を有する部分(以下「開放部分」)とは「常時外気に開放された開口部の面積の合計の割合が1/20以上であるもの」(建築物省エネ法施行令第4条第1項)の部分をいいます。延べ面積に計上される部分で、内部に間仕切り壁または戸を有しない階またはその一部であって、その床面積に対する常時外気に開放された開口部の面積の割合が1/20以上の部分です。
「常時外気に開放された開口部」には、当該開口部を閉鎖するための建具が設置されていない部分が該当します。「建築物省エネ法に係るQ&A」(国土交通省)によると、

@ 通常利用時は開放されていたとしても、閉鎖することが可能なシャッター、ふすま、障子等の設置があれば「常時外気に開放された開口部」には該当しません。
A 閉鎖された場合にも部分的に外気に通じるリングシャッター等については、当該リングシャッター等のうち部分的に外気に通じる部分を「常時外気に開放された開口部」として、有効な開口部面積を算出することになります。

図1 階全体が開放部分となる建物の例

階全体が開放部分となる建物の例

図2 階の一部が開放部分となる建物の例

階の一部が開放部分となる建物の例

出典:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構「建築物省エネ法に係る適合義務(適合性判定)・届出マニュアル

6.建築物省エネ法における<新築>と<増改築>の適合義務の違い

<新築>と<増改築>における適合義務対象の有無の判断は以下のとおりです。

■ 新築
非住宅部分の床面積(高い開放性を有する部分を除いたもの)が2,000u以上のものが適合義務対象
■ 増改築
増改築に係る非住宅部分の床面積(高い開放性を有する部分を除いたもの)が300u以上であり、かつ、増改築後に非住宅部分の床面積(高い開放性を有する部分を除いたもの)が2,000u以上となるものが適合義務。
特に、平成29年4月施行時点で現に存する建築物の増改築については、上記の条件に加え、「増改築に係る非住宅部分の床面積(高い開放性を有する部分を除かないもの)」の「増改築後の非住宅部分の床面積(高い開放性を有する部分を除かないもの)」に対する割合が1/2を超えるものが適合義務対象。
なお、1/2以下の場合は建築物省エネ法附則第3条により適合義務は不要とし、代わりに届出を求めるなどの緩和措置が設けられています(特定増改築)。

図3 建築物の増改築面積等に応じた適合義務又は届出の対象

建築物の増改築面積等に応じた適合義務又は届出の対象

平成29年4月施行時点で現に存する建築物の増改築のうち、適合義務の対象となるものの考え方は図4のとおりです。

図4 基準適合義務の対象となる増改築の考え方

基準適合義務の対象となる増改築の考え方

出典:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構「建築物省エネ法に係る適合義務(適合性判定)・届出マニュアル

また、下記に特定増改築の例を示します。この例以外にも特定増改築はさまざまなケースが予想されますので、事前に所管行政庁に確認をするほうがよいでしょう。

【例A】

特定増改築は平成29年4月施行時点で現に存する建築物に増改築する場合、回数に関係なく適用されます。例えば図5のように、その増築の際に増築部分が既存部分の面積以下の増築をする限り、特定増改築とみなされ、届出が求められています。(増築1回目〜3回目まで全て届出となります)

図5

特定増改築の例

【例B】

図6のように、増築1回目は増築部分が既存部分の面積を超えた場合は、その増築は特定増改築に該当しません。ただし、2回目以降の増築は、増築部分が既存部分の面積以下の増築を行えば、特定増改築に該当します。つまり、1回目は適合義務の対象となり、2回目と3回目の増築は届出となります。

図6

特定増改築の例