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コラム

建築物省エネ法における規制措置の評価方法とモデルの選択について(非住宅用途)

1. 規制措置における評価方法について

平成29年4月1日に施行された平成27年法律第53号「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下「建築物省エネ法」)における規制措置(適合義務(適合性判定)及び届出)は、建築物エネルギー消費性能基準(第2条3号)(以下「省エネ基準」)が適用されます。その内容は住宅用途と非住宅用途で異なり、その適用基準は以下のとおりです。

根拠条文等 対象
用途
対象建築行為等 適用基準 計算プログラムの例
基準適合義務
(適合性判定)
【11/12条】
非住宅 特定建築行為 建築物省エネルギー
消費性能基準
【2条3号】
・一次エネルギー消費量基準 ・建築物のエネルギー消費量計算プログラム
(非住宅版)
・モデル建物法
届出等
【19条】
住宅 300u以上の新築、増改築等 ・外皮基準
・一次エネルギー消費量基準
・住宅・住戸の外皮性能の計算プログラム
・エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)
非住宅 300u以上の新築、増改築等
(基準適合義務対象を除く)
・一次エネルギー消費量基準 ・建築物のエネルギー消費量計算プログラム
(非住宅版)
・モデル建物法

ここでは非住宅用途での規制措置について説明します。
これらの基準のうち、非住宅用途における基準適合義務(適合性判定)及び届出において、一次エネルギー消費基準への適合確認は、主に「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)」(以下「標準入力法」)および「モデル建物法」の手法により行われます。一次エネルギー消費量基準の判断には「BEI」(Building Energy Index)という指標が用いられます。BEIとは、設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で除した値です。

BEIとは、設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で除した値

@標準入力法(主要室入力法を含む)(建築物エネルギー消費性能基準等を定める基準第1条第1項第1号イ) 標準入力法とは建築物の全ての室単位で床面積や設備機器等を入力する手法です。主要室入力法とは全ての室単位で床面積を入力しますが、特定の室用途に設置される設備機器の入力を省略する手法です。

Aモデル建物法(建築物エネルギー消費性能基準等を定める基準第1条第1項第1号ロ) モデル建物法とは申請された建築物と同一用途のモデル建築物を想定し、室を特定せずに断熱材や建築設備等の性能値を建物全体として入力する手法です。

標準入力法とモデル建物法の違いとして、標準入力法は計算結果に一次エネルギー消費量が表示されます。このため一次エネルギー消費量を用いた制度では標準入力法による計算を行うこととなります。 標準入力法はモデル建物法に比べ、より詳細な評価を行います。どちらの手法もExcelシートに各種情報を入力し、ウェブプログラム上で計算を行うことになります。シート構成を下図に示しますが、標準入力法に比べてモデル建物法は入力項目が省略されていることがわかります。また、コージェネレーションシステムや、一部の空調熱源システムは標準入力法でのみ評価が可能となっています。

標準入力法とモデル建物法の違い

出典:一般財団法人 住宅性能・評価協会『建築物省エネ法第30条・第36条に基づく認定に係る技術審査マニュアル(2017非住宅編)』P24・P103の図をもとに弊社作成

2. 標準入力法

標準入力法は、計算対象建築物に設けられた各計算対象室について、室用途ごとに定められる設備別基準一次エネルギー消費量に関する係数に床面積を乗じた値を建築物全体で累積し求めた「基準一次エネルギー消費量」と、設備ごとに定められた計算方法に基づき算出した値を計算対象設備全体で累積した「設計一次エネルギー消費量」を比較し、設計値が基準値を下回っていることを確認する計算方法となっています。よって、計算対象室ごとに情報入力が必要です。計算精度は高くなりますが、入力しなければならない情報量が多くなります。
本計算方法は国立研究開発法人建築研究所ウェブページ「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」で公開されている「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)」(以下「標準入力法支援ツール」)を用いて行うこととなります。
同ウェブページ上に用意されたExcelシート「外皮・設備仕様入力シート」に必要情報(各室の条件等)を入力し、標準入力法支援ツールにアップロードすることで、一次エネルギー消費量などの計算を行います。
本計算方法はPAL値や空調設備、換気設備、照明設備、給湯設備、昇降機、効率化設備など個別に一次エネルギー消費量(単位:[GJ/年])の計算結果が表示され、一次エネルギー消費量算出が条件となっている各種制度等で利用できます。
室仕様入力シートでは、各室の評価対象設備の確認およびその有無を入力することになります。標準入力法においては、全ての室に設置される全ての設備を評価するわけではなく、決められた設備のみを評価します。また、特に空調換気設備や給湯設備においては機器の入力に細かいルールがありますので、標準入力法支援ツール解説の記載に従う必要があります。

3. モデル建物法

モデル建物法は建物用途ごとに形状や室用途構成などを仮定したモデル建物に対して、実際に設置される設備機器等の仕様を反映させることにより、BEI及びBPIの値を算出する方法です。具体的な設計・基準一次エネルギー消費量、PAL*の値は表示されず、BEI及びBPIが各制度の水準以下であることを確認する方法です。なお、BPIとはPAL*の設計値を基準値で除したものをいいます。

本計算方法は国立研究開発法人建築研究所ウェブページ「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」で公開されている「モデル建物法」(以下「モデル建物法支援ツール」)を用いて行うこととなります。

イメージとしては、@基準となるモデル建物とA設計条件を反映させたモデル建物を比較し、その一次エネルギー消費量の比率を算出する方法です。@基準となるモデル建物は、用途区分コードによるモデル建物と規模等で決まり、用途に応じて基準一次エネルギー消費量を算出します。また、A設計によるモデル建物は、実際に設置される機器のうち、モデル別に指定された機器の仕様を反映させることで設計一次エネルギー消費量を算出します。

(*) PAL:年間熱負荷係数

4.モデル建物法におけるモデル建物選択の方法

モデル建物法による評価においては、評価対象建築物全体を「建築基準法施行規則 別記様式に定める建築物又は建築物の部分の用途の区分」(以下「建築物用途」)に応じて区分し、それぞれの建築物用途に対してモデル建物を作成します。つまり、確認申請書(第四面)【2.用途】に記載される用途区分コードによりモデル建物を作成する、という事です。建築物用途が複数ある場合は複数のモデル建物が作成されるため、複数用途集計機能を用いて建築物全体の評価結果を得ることになります。
建築物用途に対応するモデル建物はモデル建物法支援ツール解説に記載があります。
モデル建物の選択例を示します。

  • A棟とB棟のように、用途名称が異なる場合でも用途区分コードが同じであれば、同じモデル建物を選択します。(※庁舎は08300の用途区分コードの場合もあります)
  • C棟のように、一つの棟に複数の用途区分コードが割り当てられる場合、それぞれの用途区分コードごとにモデル建物を選択し、最終的に複数用途集計機能により、一つの建物として計上します。
  • D棟のように、一つの用途区分コードのみ割り振られている場合でも、(08090)の用途区分コードには学校モデルと講堂モデルの選択肢があります。講堂モデルは「講堂あるいはそれに類する用途に供する部分を有する場合、当該部分は講堂モデルを適用する」となっているため、該当する場でも複数用途と同じ扱いとなります。
  • E棟のように、一つの棟に複数の用途区分コードが割り当てられる場合でも、それらの用途区分コードのモデル建物の選択肢が同じ場合、単一モデル建物と同じ扱いとなります。
  • F棟は工場用途建物の場合で他の用途とはモデルの選択が異なります。この例は次章にて説明します。
用途区分コード 用途名称 モデル選択 備考
A棟 08470 事務所 事務所モデル 単一モデル建物
B棟 08470 庁舎 事務所モデル 単一モデル建物
C棟 08438 物販店舗 小規模物販モデル 複数モデル建物
08450 飲食店 飲食店モデル
08490 自動車駐車場 工場モデル
D棟 08090 高等学校 学校モデル 複数モデル建物
(講堂部分) 講堂モデル

E棟

08390 射的場 小規模物販モデル 単一モデル建物
08438 物販店舗
08456 美容院
F棟 08340 工場 工場モデル 複数モデル建物
(300u以上の生産の用に供しない部分) 事務所モデル

5.工場用途建物のモデル建物の選択について

(08340)工場(自動車修理工場を除く)や(08520)倉庫業を営まない倉庫などでは、「工場モデル」を選択することになりますが、当該建築物用途に属する部分の中に、工場に付随する室(事務室や便所等)が含まれることがあります。工場モデルで評価する部分は“倉庫”や“屋外駐車場又は駐輪場”用途の室に設置された照明設備と昇降機のみとなり、その他の部分は評価に反映されません。付随する室の面積が大きく建築物全体のエネルギー消費性能に与える影響が小さくない場合、当社では当該部分については別途「事務所モデル」を選択し評価するようにお願いしています。その条件は以下のとおりです。

  • (イ)及び(ロ)以外の部分の床面積が300u以上である場合
    (イ)省エネ基準において評価の対象とならない室(物品、サービス等を生産するための室等)
    (ロ)室用途が「倉庫」及び「屋外駐車場又は駐輪場」である室
  • 具体的には
  • 事務所、休憩所、便所、監視室、制御室などの室、及びその関連の通路等の合計が300u以上ある場合は工場モデルとは別に事務所モデルの評価を行う。

なお、(イ)とは以下の(1)、(2)のような室を示します

(1)現時点では標準的な使用条件を設定することが困難であるもの(物品等を生産するための室及び設備)

  • ・工場等における物品を製造するための室、及び、その室と機能的に切り離すことができない通路及び搬出入スペース
  • ・室全体が冷凍庫、冷蔵庫、定温庫である室
  • ・水処理設備、焼却設備等が設置された室
  • ・電気事業、熱供給事業等を目的として電気や熱等を生産、供給するための室
  • ・ データセンター(コンピュータやデータ通信のための設備を設置・運用することに特化した建築物又は室)における電算機室
  • ・ 大学や研究所の実験室等において、温熱環境や空気質等を高度に制御する必要がある室(クリーンルーム等)
  • ・ 機械式駐車場(従属用途も含む、吊上式自動車車庫や機械式立体自動車車庫等)
  • ・ その他エネルギーの使用の状況に関してこれらに類する室及び設備

(2)常時使用されることが想定されないもの
(防災、安全、防犯、避難又はその他特殊な用途のための室及び設備)

  • ・免震、制震設備等が設置された室
  • ・非常用の発電設備、バックアップ用機器等が設置された室
  • ・水害等の災害対策のために設けられた室(特殊な監視盤等が設置される室、排水ポンプ等の設備機械室等)