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建築物ライフサイクルカーボン評価制度とは

2026/10/23up

2026年改正建築物省エネ法の概要

2026年7月、「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律」(令和8年法律第75号)が公布されました。

改正法では、建築物の生産等の各段階で排出される炭素量を算定し、建築物の環境への負荷を評価する仕組みが新設されました。併せて、関係者による排出量削減の取り組み、一定の建築物に関する届出、建築材料等の炭素排出量原単位の表示、建築物の環境性能に関する第三者認証などが定められています。[1]

本記事の法令解説は、成立・公布された改正法に基づいています。また、制度創設の背景と全体像を示すため、国土交通省の成立後の公表資料から図表と関連データを引用しています。

※本記事は2026年10月7日時点の情報に基づいています。

届出対象となる具体的な用途・規模、算定・評価方法、届出様式、認証基準、施行日などは、今後定められる政令、省令、告示、評価指針等を確認する必要があります。

制度創設の背景

建築物の脱炭素化を進めるためには、建築物の使用段階だけでなく、資材製造、施工、解体などを含むライフサイクル全体の排出量を把握し、削減につなげる必要があります。

国土交通省の資料によると、国内のCO2排出量のうち、建築分野が占める割合は推計で約4割です。このうち、建築物の使用による排出量が約3割、資材製造・施工・解体による排出量が約1割とされています。[2]

図1 建築分野におけるCO2排出量と建築物のライフサイクル

建築物のライフサイクル イメージ画像

出典:国土交通省「改正建築物省エネ法の概要」

こうした背景を踏まえ、改正法では、建築物のエネルギー消費性能の向上に加え、建築物の脱炭素化を促進するための措置が新設されました。

関係規定の施行後、法律の題名は「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」に改められます。[1]

建築物通算炭素排出量とは

改正法では、建築物の生産等の各段階で排出される炭素量を通算した量を「建築物通算炭素排出量」としています。また、建築物通算炭素排出量を算定し、その建築物の環境への負荷を評価することを「建築物通算炭素排出量評価」としています。[1]

一般には「ライフサイクルカーボン」という表現も用いられますが、改正法では「建築物通算炭素排出量」と「建築物通算炭素排出量評価」という用語が使用されています。

法改正の目的と基本理念

改正法により、建築物通算炭素排出量評価その他の措置を通じて、建築物の脱炭素化を促進することが法律の目的に加えられました。[1]

また、建築物のエネルギー消費性能の向上と脱炭素化に関する基本理念として、主に次の内容が定められています。

  • ライフサイクル思考での建築物の環境負荷の削減に取り組むこと
  • 経済的側面、社会的側面、環境的側面の3つの側面に配慮した建築物のあり方を追求すること
  • 建築物のライフサイクルの各工程に携わる多様なステークホルダー間で連携を図ること

制度の主な内容

改正法では、建築物通算炭素排出量評価を促進するため、関係者の責務、評価指針、建築主による設計時評価、一定の建築物に関する届出、炭素排出量原単位の表示などの仕組みが設けられました。[1]

図2 建築物ライフサイクルカーボン評価制度の主な措置

建築物のライフサイクル イメージ画像

出典:国土交通省「改正建築物省エネ法の概要」

1.関係者による排出量削減の取り組み

改正法では、建築物通算炭素排出量の削減について、建築主、建築士、建設業者、建築材料等製造等事業者など、建築物に関係する者の役割が定められています。[1]

建築主、所有者、管理者、占有者

建築主、建築物の所有者、管理者または占有者は、建築物通算炭素排出量の削減を図るよう努めることとされています。

建築士

建築士は、建築物の設計を行うとき、設計を委託した建築主に対して、建築物通算炭素排出量の削減に資する事項を説明するよう努めることとされています。

建設業者

建設業者は、建築工事の請負契約を締結するとき、契約の相手方である建築主に対して、建築物通算炭素排出量の削減に資する事項を説明するよう努めることとされています。

建築材料等製造等事業者

建築材料等製造等事業者は、製造等を行う建築材料等について、炭素排出量原単位を表示するよう努めることとされています。

2.国による指導・助言

国土交通大臣または主務大臣は、建築物通算炭素排出量の削減を促進するため、特に必要があると認めるときは、関係者に対して必要な指導および助言を行うことができます。[1]

3.評価指針の策定

主務大臣は、建築物通算炭素排出量評価に関する指針を定め、公表することとされています。
改正法では、指針に定める事項として、次の内容が示されています。[1]

  • 建築物通算炭素排出量の算定および評価の方法
  • 建築主の判断の基準となるべき事項
  • 炭素排出量原単位その他、評価に必要な建築材料等に関する情報の収集および整理の方針

具体的な算定・評価方法は、この指針に基づいて示されることになります。

4.建築主による設計時評価

建築主は、環境への負荷が少ないものとして政令で定める建築物を除き、建築物を建築しようとするときは、指針に従って、設計時に建築物通算炭素排出量評価を行うよう努めなければならないとされています。[1]

この設計時評価は、一般の建築物については努力義務として位置付けられています。

5.建築士による評価への協力

建築物の設計の委託を受けた建築士は、建築主が設計時の建築物通算炭素排出量評価を行う場合に、評価に必要な事項を説明するなど、必要な協力を行うものとされています。[1]

これは、建築士が設計時に削減に資する事項を説明する努力義務とは別に設けられた規定です。

6.一定の建築物に関する届出

改正法では、政令で定める用途に供する一定規模以上の建築物について、新築、増築または改築を行おうとする建築主に、届出に関する義務を課しています。[1]

対象となる建築主は、次の事項を行う必要があります。

  • 建築物通算炭素排出量削減計画を作成すること
  • 設計時建築物通算炭素排出量評価を行うこと
  • 削減計画および評価結果を国土交通大臣へ届け出ること

届出は、原則として工事に着手する日の14日前までに行います。一定の要件に該当する場合には、届出期限に関する特例が設けられています。

対象となる具体的な用途・規模や、特例の要件、届出手続きなどは、関係法令等を確認する必要があります。

7.国等の機関による通知

国、都道府県または市町村などの機関の長が、届出対象に相当する建築行為を行う場合は、一般の建築主による届出に代えて、国土交通大臣への通知を行うこととされています。[1]

8.適用除外

次のような建築物のうち、政令で定めるものについては、設計時評価や届出に関する規定が適用されません。[1]

  • 建築物通算炭素排出量が著しく少ない建築物
  • 保存措置などにより、建築物通算炭素排出量の削減が困難な建築物
  • 仮設建築物

具体的な適用除外の範囲は、政令で定められます。

9.炭素排出量原単位の表示

建築材料等製造等事業者は、指針に従い、主務大臣が定める方法によって建築材料等の炭素排出量原単位を算定したときは、次の内容を表示できます。[1]

  • 所定の方法に従って算定したものである旨
  • 算定した炭素排出量原単位

また、炭素排出量原単位について紛らわしい表示が行われた場合に備え、主務大臣による指示、公表、命令に関する規定も設けられています。

建築物の環境性能に関する第三者認証

改正法では、「建築物環境性能の認証」に関する制度が新設されました。
建築主等は、登録建築物環境性能認証機関に申請し、建築物の環境性能について認証を受けることができます。認証を受けた場合は、認証書および標章が交付されます。[1]

認証制度は、建築物通算炭素排出量評価に関する事項および建築物のエネルギー消費性能を対象としています。具体的な認証の対象、区分、基準および申請手続きについては、施行時の関係法令等を確認する必要があります。

認証を受けた建築物については、交付された標章を建築物や広告などに表示できます。一方、認証を受けていない建築物について、認証を受けたものと誤認させるような表示をすることは禁止されます。

登録建築物環境性能認証機関

第三者認証を行う機関は、国土交通大臣の登録を受けた「登録建築物環境性能認証機関」です。

改正法では、登録の申請、登録基準、認証業務の実施義務、役員・職員の秘密保持義務、帳簿の備付け、国土交通大臣による監督など、認証機関に関する規定が定められています。[1]

登録建築物環境性能認証機関には、法令に基づいて認証業務を公正かつ適確に実施することが求められます。

制度の施行時期

建築物通算炭素排出量評価、建築物環境性能の認証、登録建築物環境性能認証機関などに関する規定は、改正法の公布の日から2年以内の政令で定める日から施行されます。[1]

まとめ

2026年7月に公布された改正建築物省エネ法により、建築物通算炭素排出量評価に関する制度が新設されました。

制度の主な内容は、次のとおりです。

  • 関係者による建築物通算炭素排出量の削減
  • 主務大臣による評価指針の策定・公表
  • 建築主による設計時評価
  • 建築士による説明および評価への協力
  • 一定の建築物に関する削減計画および評価結果の届出
  • 建築材料等の炭素排出量原単位の表示
  • 建築物の環境性能に関する第三者認証・表示
  • 登録建築物環境性能認証機関に関する制度

一方、具体的な算定・評価方法、届出対象となる用途・規模、届出様式、認証基準、施行日などは、改正法本文では定められていません。制度への対応に当たっては、今後定められる政令、省令、告示、評価指針等を確認する必要があります。


出典・参考資料

[1] 国土交通省「改正建築物省エネ法(2026年7月公布)新旧対照表」

[2] 国土交通省「改正建築物省エネ法の概要」第8回建築物LCA制度検討会 資料1、2026年10月5日