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2027年4月施行「上位住宅トップランナー制度」とは

2026/10/27up

〜対象となる事業者と求められる対応を解説〜

2027年4月1日、改正建築物省エネ法に基づく「上位住宅トップランナー制度」が施行されます。

この制度は、既存の住宅トップランナー事業者のうち、住宅の供給量が特に多い事業者を国土交通大臣が指定し、住宅の省エネルギー性能の一層の向上に向けた中長期的な計画の策定・提出と、その取り組み状況の毎年度の報告を求めるものです。

本記事では、2026年10月時点で公表されている法令および政府資料に基づき、制度創設の背景、対象となる事業者、指定事業者に求められる対応について解説します。


1.上位住宅トップランナー制度創設の背景

2026年7月31日、「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律」が、令和8年法律第75号として公布されました。

この法改正では、建築物の使用段階における省エネルギー性能の向上をさらに進めるとともに、建築物の資材製造から建設、使用、解体までのライフサイクル全体での脱炭素化を進めるため、複数の制度が新設されました。上位住宅トップランナー制度も、そのひとつです。

従来の住宅トップランナー制度では、構造や設備について自ら定めた規格に基づく住宅を年間に一定戸数以上供給する事業者に対し、国が定める住宅トップランナー基準の達成に向けた努力義務を課しています。

一方、改正前の制度には、対象事業者による計画的な取り組みを担保し、その状況を国が継続的に把握する仕組みが設けられていませんでした。このため、住宅トップランナー事業者のうち、住宅供給量が特に多い事業者を指定し、中長期的な計画の策定などを義務づける上位住宅トップランナー制度が創設されました。

2.上位住宅トップランナー制度とは

上位住宅トップランナー制度は、住宅トップランナー事業者のうち、住宅市場に占める割合が特に大きい事業者を、国土交通大臣が「上位住宅トップランナー事業者」として指定する制度です。

国土交通省は、制度の対象範囲について、おおむね住宅市場の4分の1を占める住宅供給事業者を指定する仕組みと説明しています。

指定を受けた事業者には、住宅のエネルギー消費性能の一層の向上に向けて、次の対応が求められます。

  • 住宅のエネルギー消費性能の一層の向上に関する目標を設定する
  • 目標を達成するために取り組む事項を定める
  • これらを記載した中長期的な計画を策定し、提出する
  • 計画で定めた事項とその取り組み状況を、毎年度、国土交通大臣に報告する

これらは、既存の住宅トップランナー基準の達成に向けた努力義務とは別に、上位住宅トップランナー事業者に求められるものです。

図1 上位住宅トップランナー制度の概要

建築物のライフサイクル イメージ画像

出典:国土交通省「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案」概要

3.対象となる事業者

上位住宅トップランナー事業者の指定基準となる年間供給戸数は、住宅の区分ごとに政令で定められています。

住宅の区分 法令上の事業者区分 指定基準となる年間供給戸数
建売戸建て住宅 特別特定一戸建て住宅建築主 2,000戸
分譲マンション 特別特定共同住宅等建築主 2,000戸
注文戸建て住宅 特別特定一戸建て住宅建設工事業者 2,000戸
賃貸アパート 特別特定共同住宅等建設工事業者 15,000戸

国土交通省の規制事前評価書によると、これらの基準戸数は、2021年度から2024年度までの住宅トップランナー事業者による供給実績を踏まえ、住宅市場全体の累積供給量の上位4分の1を占める事業者が指定されるよう設定されています。

ここで示した戸数は、上位住宅トップランナー事業者として指定する際の基準となる戸数です。基準戸数を満たした事業者を、国土交通大臣が指定する仕組みであり、基準戸数に達したことだけをもって、自動的に指定が完了するものではありません。

また、住宅トップランナー事業者は、前年度に供給した住宅の戸数が指定基準となる戸数以上となった場合、その供給戸数を国土交通大臣に届け出ることとされています。

4.指定事業者に求められる中長期的な計画

上位住宅トップランナー事業者として指定された事業者は、住宅のエネルギー消費性能の一層の向上に関する中長期的な計画を策定し、国土交通大臣に提出する必要があります。

公表されている法律の要旨では、この計画に、次の内容を定めることとされています。

  • 住宅のエネルギー消費性能の一層の向上に関する目標
  • その目標を達成するために取り組む事項

指定事業者は、計画を提出するだけでなく、計画で定めた事項とその取り組み状況を毎年度、国土交通大臣に報告しなければなりません。

このため、同制度は、対象事業者が一度だけ計画を提出する仕組みではなく、中長期的な計画と毎年度の報告を通じて、取り組み状況を継続的に把握する仕組みとなっています。

5.取り組み状況が不十分な場合の措置

国土交通大臣は、上位住宅トップランナー事業者の取り組み状況などが著しく不十分であると認めるときは、必要な措置をとるべき旨の勧告を行うことができます。

ただし、制度上の措置については、各段階の要件や手続が法令で定められています。そのため、「計画上の目標を達成できなければ直ちに処分を受ける」と単純化することは適切ではありません。

6.既存の住宅トップランナー制度との関係

上位住宅トップランナー制度は、既存の住宅トップランナー制度を廃止したり、置き換えたりするものではありません。

既存の住宅トップランナー制度では、構造や設備について規格化された住宅を年間に一定戸数以上供給する事業者に対し、国が定める住宅トップランナー基準の達成に向けた努力義務が課されています。

上位住宅トップランナー制度では、その住宅トップランナー事業者のうち、住宅供給量が特に多い事業者を国土交通大臣が指定します。指定を受けた事業者には、既存制度に基づく取り組みに加え、中長期的な計画の策定・提出と、取り組み状況の毎年度報告が求められます。

両制度の主な違いは、次のとおりです。

項目 住宅トップランナー制度 上位住宅トップランナー制度
制度の対象 規格化された住宅を一定戸数以上供給する事業者 住宅トップランナー事業者のうち、住宅供給量が特に多く、国土交通大臣の指定を受けた事業者
主な内容 住宅トップランナー基準の達成に向けた努力義務 中長期的な計画の策定・提出、取り組み状況の毎年度報告
主な内容 おおむね住宅市場の上位2分の1を占める事業者 おおむね住宅市場の上位4分の1を占める事業者

7.施行日と公表状況

上位住宅トップランナー制度に関する規定は、2027年4月1日に施行されます。施行日は、改正法の一部の施行期日を定める政令によって定められました。関係政令は2026年9月11日に閣議決定され、同年9月16日に公布されています。

2026年10月時点で確認できる公表資料からは、制度の対象区分、指定基準となる供給戸数、中長期的な計画および毎年度報告の基本的な枠組みが示されています。

一方、中長期的な計画や報告の具体的な様式、提出期限、初回提出・報告の時期、指定手続の詳細については、今回確認した公表資料だけでは確定できません。これらの運用事項については、今後公表される省令、告示、様式、通知などを確認する必要があります。

まとめ

2027年4月1日に施行される上位住宅トップランナー制度は、住宅トップランナー事業者のうち、住宅供給量が特に多い事業者を国土交通大臣が指定し、住宅のエネルギー消費性能の一層の向上に向けた計画的な取り組みを求める制度です。

指定基準となる年間供給戸数は、建売戸建て住宅、分譲マンション、注文戸建て住宅がそれぞれ2,000戸、賃貸アパートが15,000戸です。

指定を受けた事業者は、目標を含む中長期的な計画を策定・提出し、その取り組み状況を毎年度、国土交通大臣に報告する必要があります。

制度の対象となる可能性がある事業者は、今後公表される計画・報告の様式、提出時期、指定手続などの運用情報を確認することが必要です。


出典・参考資料

国土交通省「改正建築物省エネ法の施行に伴う関係政令を閣議決定」2026年9月11日

国土交通省「『建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案』を閣議決定」2026年3月27日

参議院「第221回国会 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案」

国土交通省「規制の事前評価書 上位住宅トップランナー事業者の指定に係る基準となる住宅の戸数の設定」

国土交通省「規制の事前評価書 上位住宅トップランナー事業者に対して、より高い省エネ性能を有する住宅を供給させる仕組みの創設」