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大林組に聞く BIM図面審査導入のリアル2026/08/05up
2026年4月にスタートしたBIM図面審査。建築確認手続きのデジタル化を推進する新たな仕組みとして期待される一方で、実際の現場ではどのような変化が起きているのでしょうか。 今回ビューローベリタスジャパンでは、BIM図面審査に先行して取り組む大林組にインタビューを実施しました。導入時に直面した課題、運用を通じて見えてきた価値、そして2029年に予定されるBIMデータ審査を見据えた展望について伺いました。(文中敬称略) 最大の課題は技術ではなく理解だった―BIM図面審査の取り組みで最初に直面した課題はなんでしたか?[楠田] 最大の課題は、BIM図面審査という制度そのものを設計者に正しく理解してもらうことでした。
楠田 雄亮 係長 「BIM図面審査」とはゼロから全く新しいことを始めるわけではなく、従来の電子申請に+αとしてIFCモデル*と誓約書を添えるのが今までとの大きな違いです。まずはその認識を社内で共有する必要がありました。 *IFC(Industry Foundation Classes)は、建築物の3Dモデルや属性情報を異なるBIMソフト間で受け渡しするための標準データ形式 そこで当社では、社内関係部門が連携し、設計者に対して「BIM図面審査とは」から始まる基本的な制度理解を進める取り組みを実施しました。認識の相違をなくし、申請が近づくにつれて、提出内容の確認に向けたフォロー体制を構築していきました。 また、大林組ではSBS(Smart BIM Standard)などの社内のBIM運用ルールが整備されており、標準的なプロジェクトを前提とした準備を進めることができました。こうした既存の仕組みがあったことは、導入において大きなアドバンテージだったと思います。 BIMデータ活用による審査品質向上と業務効率化― BIMデータを活用した審査で、特に効果があったポイントはどこですか?[楠田] 大きく3点あります。 第一に、意匠・構造の統合モデル(1ファイル)を原則とする運用により、図面間の不整合が原理的に生じにくくなった点です。 *CDE(Common Data Environment:共通データ環境、BIMプロジェクトで関係者全員が利用する単一の情報共有基盤)
誓約書の内容は人による判断と合意形成が重要― 人の判断が必要と感じた箇所はありましたか?[楠田] はい、特に誓約書の記載内容の判断には人の判断が不可欠です。BIMデータの入力状況は物件ごとに異なるため、各項目の取り扱いについては、社内関係者が協議して決める必要があります。 そのため、社内関係者が連携し、整合性確認部位を確認するプロセスを導入しています。また、対応範囲については、案件の特性に応じて段階的に検討を進めています。 導入して想定外だった「審査者との認識合わせ」― 実際の運用で課題に感じた点はどこですか?
武田 怜 課長 [武田] 当初は、設計者への教育や制度説明が最大の課題になると思っていました。しかし、実際に始まってみると、想定以上だったのは設計者と審査員との認識の違いでした。 象徴的だったのが「2D加筆」です。 設計者にとっては一般的な考え方でも、
については、審査者と必ずしも共通認識があるとは限りませんでした。 そのため、場合によっては設計者が直接説明に加わり、BIMデータの作り方や考え方を共有する場面もありました。制度を運用しながら互いに理解を深めていくプロセスが必要だと感じています。 新制度だからこそ生まれた協力関係― 実際に運用して良かったと感じた点はありましたか?[楠田] 審査機関が非常に協力的だったことです。消防との調整や制度解釈など、多くの課題について一緒に考えながら進めることができました。弊社も審査機関側もお互い初めての取り組みだったこともあり、積極的に新しい制度の対応に一緒にチャレンジしていけたのはよかった点でした。 ― BIM審査を第三者機関に依頼するメリットはどこにあると感じましたか?審査機関は確認申請の審査だけでなく、構造適判・省エネ適判との連携やCDE環境の構築を含めたトータルのフロー管理を担っていただけます。 特にCDE上でのリンクファイルによる図書共有の仕組みは、審査機関側が適切に環境を整備してくださることで初めて機能するものであり、その点での専門性は非常に高いと感じています。 審査機関には法令解釈や確認審査に関する豊富な知見が蓄積されています。そうしたナレッジがDXによってさらに活かされることで、BIMデータ審査やAI活用など新たな可能性が広がっていくはずです。私たちとしても、そうした知見を持つ審査機関とともに、“わくわくする未来”に向けたチャレンジを進めていけることを期待しています。 CDEでの通知機能と権限設定は今後の改善ポイント―システム面でつまづきやすい点はありましたか?[武田] 運用面ではいくつか改善の余地もあります。CDE上のコメントやチャット機能は充実していますが、通知方法については改善の余地があり、投稿に気づきにくい場面があります。権限設定・ファイル更新・リンク共有・二段階認証などの運用が機関ごとに一部異なるため、運用面で負担を感じる場面もありました。今後はシステム面での標準化や利便性向上が期待されます。 [楠田] 個人的に面白いなと思っているところは、これまでは申請者と審査者が別々の環境で作業していましたが、将来的にはみんなが触ったことのあるツールでプロジェクトを進められる可能性がある点。これが実現されるなら未来として楽しいのではないかと感じております。 運用のポイントは「合意形成会議」と事前協議― BIM図面審査をスムーズに進めるために重要だったことは何でしょうか?[武田] 最も重要だったのは、申請前の事前協議です。BIM図面審査では、入出力基準の審査省略事項(誓約書の内容)、図書やIFCデータの表現内容、質疑・補正対応のコミュニケーション方法などを事前に取り決めておく必要があります。当社では、審査機関と事前に運用方法を確認し、その内容を社内の設計者へ展開しました。また、合意形成会議では、
などを行っています。
運用定着までの投資とBIM審査の標準化に期待―BIM審査の費用感について、導入前後でどのような認識変化がありましたか?[武田] 直接的な申請手数料については、BIM図面審査の開始に伴い各審査機関で改定が行われている部分もありますが、大きな変動は認識していません。 一方、社内の準備コスト(合意形成会議の開催、誓約書作成、2D加筆部分の参考図面作成、CDE操作の習熟など)は想定以上にかかっています。ただし、これは初期投資的な性格が強く、運用が標準化されれば効率化されていくものと考えています。 省エネ適判との連携で見えてきた新たな課題― BIM図面審査を進めるなかで、省エネ適判との関係についてはいかがでしたか?
宇治田 裕子 課長 [宇治田] BIM図面審査を運用するなかで、確認申請だけでは見えてこなかった課題もありました。そのひとつが、省エネ適判との連携です。 現在の実務では、確認申請、構造適判、省エネ適判がそれぞれ別の担当者によって運用されているケースが一般的です。そのため、同じ建築プロジェクトであっても、担当領域ごとに確認する内容や前提条件が異なり、関係者間で認識を揃える必要があります。 実際の案件でも、省エネ適判担当者と確認申請担当者が同席し、進め方や考え方について協議を行う場面がありました。制度上の位置付けや運用ルールが十分に整理されていない部分については、それぞれの立場から意見を出し合いながら方向性を確認していく必要があったといいます。 ― BIM活用は省エネ領域にも広がると考えていますか?[宇治田] 大きな可能性があると考えています。 現在でもBIMデータから省エネ計算に必要な情報を取得することは可能ですが、制度上は依然として根拠資料や説明資料を別途作成する必要があります。つまり、既にモデル内に存在している情報を改めて別形式で整理している場面も少なくありません。 今後、確認申請、構造適判、省エネ適判といった各種審査が同じデータ基盤の上で連携できるようになれば、さらに効率的な手続きが実現できる可能性があります。 また、省エネ分野ではLCCO2や環境性能評価など、建築確認の枠を超えた活用も進みつつあります。BIMデータがこうした情報と連携することで、単なる申請ツールではなく、建築物のライフサイクル全体を支える情報基盤としての価値がさらに高まっていくと考えています。 消防・行政・省エネとの連携が次のステージ― 今後の課題はどこにあると考えていますか?[楠田] 今後は確認申請だけではなく、消防同意や省エネ適判、行政協議との連携が重要になると考えています。 例えば消防同意については、「同意を取得した」という事実だけではなく、その情報を将来どのように証跡として残すのかという課題があります。建築物は長期間利用されるため、10年後、20年後でも確認できる情報管理の仕組みが必要です。 将来的には、行政や消防も含めたデータ連携基盤へ発展していくことが理想だと考えています。 BIM図面審査は「審査」ではなく「整合性確認」― BIM図面審査の本質をどう捉えていますか?[武田] これは非常に重要なポイントですが、BIM図面審査は「審査を増やすための制度」ではありません。 本来の目的は、
にあります。 つまり、審査項目を増やすのではなく、整合性確認を効率化するための仕組みです。この考え方を申請者と審査者が共有することが、今後の普及において非常に重要になると思います。 早期の経験蓄積が将来の競争力に―BIM図面審査の導入を検討している企業へアドバイスをお願いします[楠田] まずは「難しい新制度」と考えないことです。 既にBIMを活用しているのであれば、
が追加される程度であり、特別な仕組みではありません。 まずは制度の正しい理解と社内周知を進めることが重要だと思います。 [武田] また、「完璧な準備を待つよりも、まず一件やってみること」だと思います。 2029年にはBIMデータ審査への移行が予定されています。早い段階で経験を積むことは、将来必ず大きな財産になります。 大林組の考えるBIMデータ審査時代、その先の未来― 最後に、今後の展望についてお聞かせください[楠田] 私たちはBIM図面審査をゴールだとは考えていません。これはBIMデータ審査へ向かうための通過点です。 将来的には、業界全体として、
といった世界が実現していくでしょう。 また、シンガポールの「CORENET X」のように、関係機関が同じデータ基盤上で協議しながら合意形成を行う仕組みも参考になると思います。 その実現には、申請者だけでなく審査機関の進化も欠かせません。 私たちは、審査機関が持つ法令知識や審査ノウハウがDXによってさらに活かされ、BIMデータ審査や自動審査の実現に向けてともに挑戦していくことを期待しています。
まとめBIM図面審査は単なる申請手法の変更ではなく、設計者・審査機関・行政が共通のデータを活用しながら協働する新しい確認審査の姿でした。大林組の取り組みからは、制度導入の成否を分けるのは技術そのものではなく、関係者同士の理解と合意形成であることが見えてきました。 一方で、誓約書の判断基準や2D加筆の扱い、CDE運用、省エネ適判や消防同意との連携など、今後の課題も明らかになりました。これらは運用を通じて知見を蓄積することで改善していくものであり、BIM図面審査の本質は、「審査を増やすこと」ではなく「整合性確認を効率化すること」にあります。 また、その先にはBIMデータ審査やAIによる法適合チェック、行政・消防を含めたデータ連携など、建築DXがもたらす新たな可能性が広がっています。今回のインタビューからは、そうした“わくわくする未来の確認申請のあり方”を実現するためには、まず実践を重ね、経験と知見を積み上げていくことが重要であるというメッセージが伝わってきました。 2029年のBIMデータ審査時代を見据えた今の一歩が、業界全体の未来を形づくる大きな原動力になっていくのではないでしょうか。 次回(第2回)は、「実務のリアル」をテーマに、運用で直面した課題や審査機関との相互理解、そしてBIM普及後の未来像について対談形式でさらに深く掘り下げます。 [企業プロフィール]
株式会社大林組は、国内外で多様な建設プロジェクトを手がける総合建設会社。設計・施工・維持管理に至たるまで一貫した技術力を強みに、BIMの活用にも積極的に取り組んでいる。 特設ページ「建築確認におけるBIM」
ビューローベリタスジャパンは、指定確認検査機関として培ってきた知見を活かし、BIM図面審査に関する事前相談をはじめ、確認申請・構造適判・省エネ適判との連携を含めた運用支援や情報提供を行なっています。制度や運用に不安を感じている方も、まずはお気軽にご相談ください。BIM図面審査の実践を通じて、皆様の建築DX推進をサポートしてまいります。 |
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