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建築物省エネ法の概要およびその規制措置(省エネ適判と届出)について

更新日:2023/7/14
※2019/02/22に公開した記事を再編集しています

1.建築物省エネ法の概要

平成27年(2015年)7月に平成27年法律第53号「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下「建築物省エネ法」)が制定され、令和元年6月14日法律第37号で改定されました。建築物省エネ法は大きく規制措置と誘導措置に分けられ、規制措置とは300u以上の新築および増改築を行う場合に適用され、特に非住宅建築物の新築および増改築を行う場合は基準適合義務があります。誘導措置には基準適合認定・表示制度と性能向上計画認定・容積率特例があります。
建築物省エネ法は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(以下「旧省エネ法」)第5章の「住宅・建築物分野」に規定されていた省エネ措置の内容の届出や住宅事業建築主に対する住宅トップランナー制度などが移行され、新たに適合義務や大臣認定制度等が措置されたものです。一方、旧省エネ法で規定される修繕・模様替え、設備の設置・改修の届出、定期報告制度については平成29年3月31日をもって廃止されました。

2.建築物省エネ法における用語の定義

建築物省エネ法における重要な用語の定義を記載します

  • 「特定建築物」(建築物省エネ法第11条)
    非住宅部分の床面積が300u以上である建築物をいう
  • 「特定建築行為」(建築物省エネ法第11条)
    特定建築物の新築、増築もしくは改築(増築または改築する部分のうち非住宅部分の床面積が300u以上であるものに限る)または特定建築物以外の建築物の増築(増築する部分のうち非住宅部分の床面積300u以上であるものであって、当該建築物が増築後において特定建築物となる場合に限る)をいう
  • 「特定増改築」(建築物省エネ法附則第3条)
    特定建築行為に該当する増築または改築のうち、当該増築または改築に係る部分(非住宅部分に限る)の床面積の合計の増改築後の特定建築物(非住宅部分に限る)の延べ面積に対する割合が1/2以内であるものをいう
※外気に対して高い開放性を有する部分を除いた部分の床面積

建築物省エネ法は棟単位で規制されます。敷地内に複数の建築物があり、その延べ面積の合計が300uを超えたとしても、それぞれが300uを超えない新築、増築、または改築であれば規制の対象とはなりません。

3.規制措置

(1)適合義務(省エネ適合性判定)(建築物省エネ法第11条)

建築主は、特定建築行為(非住宅部分に限る)をするときは、当該特定建築物を省エネ基準に適合させなければなりません。また、本規定が建築基準関係規定とみなす(同条第2項)ことにより、建築基準法に基づく建築確認申請および完了検査の対象となり、基準に適合しなければ建築物の工事着工や建築物の使用開始ができません。

(2)届出(建築物省エネ法第19条)

建築主は、適合義務対象に該当するものを除く床面積300u以上の建築物(住宅部分)の新築、増築、または改築をしようとするときは、所管行政庁に届け出なければなりません。基準適合しない場合は、必要に応じて所管行政庁が指示・命令をすることができます(同条第2項)。

(3)説明義務(建築物省エネ法第27条)

建築主は、床面積10uを超え300u未満の建築物(住宅および非住宅)の新築、増築、または改築をしようとするときは、建築士による省エネ基準への適合性に係る評価および建築主へ書面による説明が必要です。ただし、設計を委託した建築主から評価および説明を要しない旨の意思の表明があった場合は適用されません(同条第2項)。

※外気に対して高い開放性を有する部分を除いた部分の床面積

4.適合義務または届出の適用除外となる建築物(建築物省エネ法第18条、第22条、第27条)

適合義務(省エネ適合性判定)または届出の対象となる建築物のうち、次の条件を満たす建築物は適合義務等の適用対象外となります。

  • 1)居室を有しないこと、または高い開放性を有することにより空気調和設備を設ける必要がないものとして政令で定める用途に供する建築物
  • 2)法令、または条例の定める現状変更の規制、および保存のための措置、その他の措置がとられていることにより省エネ基準に適合させることが困難なものとして政令で定める建築物
  • 3)仮設の建築物であって政令で定めるもの

1)は建物全体として以下の①または②のいずれかの用途に該当するものです。なお、ここでいう「用途」とは確認申請書(第四面)に記載する用途(建築物別の用途)です。建築物別の用途が適用除外用途のみで構成されていた場合、全体として適用除外の対象になります。ただし、適用除外用途のみで構成されている場合でも、その建物の室の用途や構成によっては適用除外の対象とはならない場合もありますので、特定行政庁への確認を推奨します。

①居室を有しないことにより空気調和設備を設ける必要がない用途

  • イ.物品(機械等も含む。)を保管または設置する建築物で、保管または設置する物品の性質上、内部空間の温度および湿度を調整する必要がないもの
  • ロ.動物を飼育または収容する建築物で、飼育または収容する動物の性質上、内部空間の温度および湿度を調整する必要がないもの
  • ハ.人が継続的に使用することのない、移動のためのもの

②高い開放性を有することにより空気調和設備を設ける必要がない用途

  • イ.観覧場その他これらに類するもの
  • ロ.スケート場、水泳場、スポーツの練習場その他これらに類するもの
  • ハ.神社、寺院その他これらに類するもの
※壁を有しないことその他の高い開放性を有するものとして国土交通大臣が定める用途に限ります。

5.高い開放性を有する部分

高い開放性を有する部分(以下「開放部分」)とは「常時外気に開放された開口部の面積の合計の割合が1/20以上であるもの」(建築物省エネ法施行令第4条第1項)の部分をいいます。延べ面積に計上される部分で、内部に間仕切り壁または戸を有しない階、またはその一部であって、その床面積に対する常時外気に開放された開口部の面積の割合が 1/20 以上の部分です。
「常時外気に開放された開口部」には、当該開口部を閉鎖するための建具が設置されていない部分が該当します。
※以下、「建築物省エネ法に係るQ&A」(国土交通省)より

①通常利用時は開放されていたとしても、閉鎖することが可能なシャッター、ふすま、障子等の設置があれば「常時外気に開放された開口部」には該当しません。

②閉鎖された場合にも部分的に外気に通じるリングシャッター等については、当該リングシャッター等のうち 部分的に外気に通じる部分を「常時外気に開放された開口部」として、有効な開口部面積を算出することにな ります。

階全体が開放部分となる建物の例
【階全体が開放部分となる建物の例】
階の一部が開放部分となる建物の例
【階の一部が開放部分となる建物の例】

出典:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構「建築物省エネ法に係る適合義務(適合性判定)・届出マニュアル」

6.建築物省エネ法における<新築>と<増改築>の適合義務の違い

<新築>と<増改築>における適合義務対象の有無の判断は以下のとおりです。

<新築>

非住宅部分の床面積(高い開放性を有する部分を除いたもの)が300u以上のものが適合義務対象となります。

<増改築>

増改築は既存建築物の完了検査済証交付年月日により適合義務対象の要否が変わるため、以下のフローにより確認が必要となります。詳しくは建築主事または指定確認検査機関までお問い合わせください。

増改築を行う際の適合義務・届出義務・説明義務の判定フロー
増改築を行う際の適合義務・届出義務・説明義務の判定フロー

出典:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構「建築物省エネ法に基づく規制措置・誘導措置等に係る手続きマニュアル」

非住宅部分の
増改築の床面積、
または増改築後の
非住宅部分の床面積
増改築を行う
床面積
2017年4月以後に
新築された建築物の
増改築
2017年4月時点で
現に存する建築物の増改築
増改築面積が増改築後全体面積の1/2超
(特定増改築外)
増改築面積が増改築後全体面積の1/2超
(特定増改築)
300u未満 10u以下 手続きなし
10u超 説明義務(本則27条)
300u以上 説明義務(本則19条)
300u以上 適合義務
(本則12条)
適合義務
(本則12条)
適合義務
(附則3条)
既存建築物の非住宅部分の床面積が300u未満の場合の規制措置の適用
非住宅部分の
増改築の床面積
増改築を行う
床面積
2017年4月以後に
新築された建築物の
増改築
2017年4月時点で
現に存する建築物の増改築
増改築面積が増改築後全体面積の1/2超
(特定増改築外)
増改築面積が増改築後全体面積の1/2超
(特定増改築)
300u未満 10u以下 手続きなし
10u超 説明義務(本則27条)
300u以上 届出義務(本則19条)
300u以上 適合義務
(本則12条)
適合義務
(本則12条)
届出義務
(附則3条)
既存建築物の非住宅部分床面積が 300u以上の場合の規制措置の適用

出典:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構「建築物省エネ法に基づく規制措置・誘導措置等に係る手続きマニュアル」

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