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建築物省エネ法における規制措置の評価方法とモデルの選択について(非住宅用途)

更新日:2023/7/24
※2019/3/19に公開した記事を再編集しています

1.規制措置における評価方法について

「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号/最終改正令和4年6月17日法律第69号)」(以下「建築物省エネ法」)における適合義務(適合性判定)等は建築物エネルギー消費性能基準(第2条3号)(以下「省エネ基準」)が適用されます。その内容は住宅用途と非住宅用途で異なり、その適用基準は以下のとおりです。

根拠条文等 対象用途 適用基準 審査対象
適合義務(適合性判定)
【11・12条】
非住宅 一次エネルギー消費量基準 特定建築行為
(特定増改築を除く)
届出義務
【19条等】
住宅および非住宅 外皮(住宅部分のみ)および一次エネルギー消費量基準 適合義務の対象に該当しない、床面積が300u以上の新築、増改築
説明義務
【27条】
住宅および非住宅 外皮(住宅部分のみ)および一次エネルギー消費量基準 適合義務および届出義務の対象に該当しない、床面積が10uを超える新築、増改築
※高い開放性を有する部分を除いた部分の床面積

これらの基準のうち、非住宅用途における適合義務(適合性判定)および届出において、一次エネルギー消費基準への適合確認は、主に「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)」(以下「標準入力法」)および「モデル建物法」の手法により行われます。一次エネルギー消費量基準の判断には「BEI」(Building Energy Index)という指標が用いられます。BEIとは設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で除した値です。

計算式

①標準入力法(主要室入力法を含む)(建築物エネルギー消費性能基準等を定める基準第1条第1項第1号イ)標準入力法とは建築物の全ての室単位で床面積や設備機器等を入力する手法です。主要室入力法とは全ての室単位で床面積を入力しますが、特定の室用途に設置される設備機器の入力を省略する手法です。

②モデル建物法(建築物エネルギー消費性能基準等を定める基準第1条第1項第1号ロ)
モデル建物法とは申請された建築物と同一用途のモデル建築物を想定し、室を特定せずに断熱材や建築設備等の性能値を建物全体として入力する手法です。

標準入力法とモデル建物法の違いとして、標準入力法は計算結果に一次エネルギー消費量が表示されます。このため一次エネルギー消費量を用いた制度では標準入力法による計算を行うこととなります。
標準入力法はモデル建物法に比べより詳細な評価を行います。どちらの手法もExcelシートに各種情報を入力し、Webプログラム上で計算を行うことになります。シート構成を下図に示しますが、標準入力法に比べてモデル建物法は入力項目が省略されていることがわかります。

標準入力法&モデル建物法入力シートの構成

2.標準入力法

標準入力法は、計算対象建築物に設けられた各計算対象室について、室用途ごとに定められる設備別基準一次エネルギー消費量に関する係数に床面積を乗じた値を建築物全体で累積し求めた基準一次エネルギー消費量と、設備ごとに定められた計算方法に基づき算出した値を計算対象設備全体で累積した設計一次エネルギー消費量を比較し、設計値が基準値を下回っていることを確認する計算方法です。よって、計算対象室ごとに情報入力が必要です。計算精度が高くなりますが、入力しなければならない情報量が多くなります。

本計算方法は国立研究開発法人建築研究所ウェブサイト「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」で公開されている「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)」(以下「標準入力法支援ツール」)を用いて行うこととなります。
同ウェブサイト上に用意されたExcelシート「外皮・設備仕様入力シート」に必要情報(各室の条件等)を入力し、標準入力法支援ツールにアップロードすることで、一次エネルギー消費量などの計算を行います。

本計算方法はPAL値や空調設備、換気設備、照明設備、給湯設備、昇降機、効率化設備など個別に一次エネルギー消費量(単位:[GJ/年])の計算結果が表示され、一次エネルギー消費量算出が条件となっている各種制度等で利用できます。
室仕様入力シートでは、各室の評価対象設備の確認およびその有無を入力することになります。標準入力法においては、全ての室に設置される全ての設備を評価するわけではなく、決められた設備のみを評価します。また、特に空調換気設備や給湯設備においては機器の入力に細かいルールがありますので、標準入力法入力マニュアルの記載に従う必要があります。

3.モデル建物法

モデル建物法は建物用途ごとに形状や室用途構成などを仮定したモデル建物に対して、実際に設置される設備機器等の仕様を反映させることにより、BEIおよびBPIの値を算出する方法です。具体的な設計・基準一次エネルギー消費量、PAL*の値は表示されず、BEIおよびBPIが各制度の水準以下であることを確認する方法です。なお、BPIとは年間熱負荷係数(PAL*)の設計値を基準値で除したものをいいます。

本計算方法は国立研究開発法人建築研究所ウェブサイト「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」で公開されている「モデル建物法」(以下「モデル建物法支援ツール」)を用いて行うこととなります。 イメージとしては、①基準となるモデル建物と②設計条件を反映させたモデル建物を比較し、その一次エネルギー消費量の比率を算出する方法です。①基準となるモデル建物は、用途区分コードによるモデル建物と規模等で決まり、用途に応じて基準一次エネルギー消費量を算出します。また、②設計によるモデル建物は、実際に設置される機器のうち、モデル別に指定された機器の仕様を反映させることで設計一次エネルギー消費量を算出します。

* PAL:年間熱負荷係数

4.モデル建物法におけるモデル建物選択の方法

モデル建物法による評価においては、評価対象建築物全体を「建築基準法施行規則 別記様式に定める建築物または建築物の部分の用途の区分」(以下「建築物用途」)に応じて区分し、それぞれの建築物用途に対してモデル建物を作成します。つまり、確認申請書(第四面)【2.用途】に記載される用途区分コードによりモデル建物を作成する、ということです。建築物用途が複数ある場合は複数のモデル建物が作成されるため、複数用途集計機能を用いて建築物全体の評価結果を得ることになります。

建築物用途に対応するモデル建物はモデル建物法入力マニュアルに記載があります。 モデル建物の選択例を示します。

  • A棟とB棟のように、用途名称が異なる場合でも用途区分コードが同じであれば、同じモデル建物を選択します。
    ※庁舎は08300の用途区分コードの場合もあります
  • C棟のように、一つの棟に複数の用途区分コードが割り当てられる場合、それぞれの用途区分コードごとにモデル建物を選択し、最終的に複数用途集計機能により、一つの建物として計上します。
  • D棟のように、一つの用途区分コードのみ割り振られている場合でも、(08090)の用途区分コードには学校モデルと講堂モデルの選択肢があります。講堂モデルは「講堂あるいはそれに類する用途に供する部分を有する場合、当該部分は講堂モデルを適用する」となっているため、該当する場でも複数用途と同じ扱いとなります。
  • E棟のように、一つの棟に複数の用途区分コードが割り当てられる場合でも、それらの用途区分コードのモデル建物の選択肢が同じ場合、単一モデル建物と同じ扱いとなります。
用途区分コード 用途名称 モデルの選択 備考
A棟 08470 事務所 事務所モデル 単一用途モデル
B棟 08470 庁舎 事務所モデル 単一用途モデル
C棟 08438 物販店舗 小規模物販モデル 複数用途モデル
08450 飲食店 飲食店モデル
08490 自動車駐車場 工場モデル
D棟 08090 高等学校 学校モデル 複数用途モデル
(講堂部分) 講堂モデル
E棟 08390 射的場 小規模物販モデル 単一用途モデル
08438 物販店舗
08456 美容院

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