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免震建築物の審査《法的な変遷と免震建築物の設計法》

2023/2/13up

1.法的な変遷

平成12年10月に公布・施行された「免震建築物の構造方法に関する安全上必要な技術基準を定める等の件(平成12年10月17日建設省告示第2009号)」によりそれまで大臣認定を取得しなければならなかった免震建築物が、一定条件を満たすこと特定行政庁や民間確認検査機関建築確認を受けることが可能となり、免震構造がより広く普及するに至りました。

■ 平成16年9月改正

一般基準としての免震建築物のクリアランス規定や、小規模戸建免震建築物の建設上の問題への対応等を主旨として、同告示が改正されました。

■平成19年6月20日改正

平成17年11月に発覚した構造計算書偽造事件を契機に、同告示および関連告示(平成12年建設省告示第1457号)の改正が行われました。
改正された平成12年建設省告示第1457号第10の主な内容は以下のとおりです。

(1)表層地盤による加速度の増幅率を表す数値Gsについて、中規模の地震時に採用できる計算方法を地盤種別に基づく略算的な方法に限定(告示第10条1項)

(2)極めて稀に発生する地震動(大規模な地震時)について検討を行う時のGsの数値を精算する際において、地盤が液状化する恐れがないことを条件とする。加えて、地盤調査によって地下深所に至る十分な層厚と剛性を有し、かつ、次の①から③までに掲げる基準に適合する工学的基盤を有することを確かめること。(告示第10条2項)

①地盤のせん断波速度が約400メートル毎秒以上であること。

②地盤の厚さが5メートル以上であること。

③建築物の直下を中心とし、表層地盤の厚さの5倍程度の範囲において地盤の深さが一様なものとして5度以下の傾斜であること。ただし、特別な調査または研究の結果に基づき傾斜する工学的基盤からの地震動の増幅と同等以上の増幅を計算できる場合にあっては、この限りでない。

2.免震建築物の設計法

告示第2009号には、免震建築物の設計方法として以下の3つが記されています。(告示第2 一、二、三号)

各設計法の概要は以下のとおりです。

(1)小規模建築物の免震設計法

小規模(四号建築物など)建築で、仕様規定(建築基準法施行令第3章第1節および第2節並びに告示第3および第4)を満たす場合、上部構造に関する構造計算が免除されています(告示第6第3項)。

告示に示す主な仕様規定は以下となります。詳しくは告示第3および第4をご参照ください。

①上部建物の最下階の床版は、厚さ18cm以上の一体の鉄筋コンクリート造とし、かつ、径 12mm以上の異形鉄筋@200以下の複合配筋とすること。

②免震装置の支承材は、上部構造の建築面積15u以下に1ヶ所以上とする。

③地盤は1、2種地盤で液状化しないこと。また、長期に生ずる力に対する許容応力度が50kN/u以上であること。

④隣地(敷地内の塀など含む)と建築物との空きは40cm以上とし、人の通行がある場合50cm以上とする。

⑤免震装置材料は、検査および点検を容易に行う位置に設けること。

⑥倉庫その他これに類する積載荷重の変動の大きな用途に供するものでないこと。

(2)上記四号建築物以外で60m以下の免震建築物の設計法

耐久性関係規定(施行令第36条第1項)に適合し、かつ、告示に定められた構造計算法(告示第6)によって安全性を確認する方法で、所謂告示免震と呼ばれている免震設計法です。

①上部構造の計算方法
免震構造では、支承材により建物の固有周期を長くすることで、建物に作用する地震力を低減させます。上部構造は、この低減された地震力に対して安全性を検証します。
告示では、上部構造設計用の地震層せん断力係数Criを定め(告示第6第3項第一号)、これに基づく地震力に対して許容応力度設計を行うとしています。
積雪荷重・風荷重に対しては、施行令82条の5第二号に基づく計算(限界耐力計算)による応力が各部材の材料強度を超えないことを確認する必要があります。
また、上部構造の各階の層間変形角が1/300(高さが13m以下であり、かつ、軒の高さが9m以下である場合にあっては、1/200)以内であること、上部構造の最下階の床版またはこれに類するものものが、水平力によって生ずる力を構造耐力上有効に免震層に伝えることができる剛性および強度を有することを確かめる必要があります。
さらに、特定天井がある場合は、告示第6第3項第八号の規定によります。

②下部構造の計算方法
免震層より下に位置する建築物の部分を下部構造と定義し、免震層に作用する地震力Qsio、および施行令88条第4項に規定する地震力の2倍の地震力によって求めた応力が、短期許容応力度以内であることを確認する必要があります。

③免震層の計算方法
告示では、応答スペクトルを利用した計算を拡張した限界耐力計算に準ずる方法で、下記に示す免震層の応答変位や作用する地震力等を計算します。

(計算方法)

  • 設計限界変位mδd点の設計限界固有周期Tsの算定。
  • 支承材および弾塑性系の減衰材(履歴免震材料)による免震層の等価粘性減衰定数:hdの算定。
  • 流体系の減衰材による免震層の等価粘性減衰定数:hvの算定。
  • 免震層の振動の減衰による加速度の低減率:Fhの算定。但し、0.4を下回る場合にあっては、0.4とする)
  • 地震によって免震層に作用する地震力:Qの算定。
  • 免震層の地震応答変位:δrの算定。

(確認項目)

  • 免震層の偏心率が3/100以内であること。(告示第6第2項第三号)
  • 免震層の地震応答変位(地震により免震層に生ずる水平方向の最大の層間変位)が免震層の設計限界変位を超えないこと。
  • 免震層に作用する力を、施行令87条の規定により計算した風圧力の1.6倍の数値として計算し、当外力が作用しているときの風応答変位が免震層の設計限界変位を超 えないこと。(告示第6第2項第六号)
  • 減衰材の負担せん断力係数μが0.03以上となること。(告示第6第2項第八号)
  • 免震建築物の接線周期Ttが2.5秒(高さが13m以下であり、かつ、軒の高さが9m以下である場合にあっては、2秒)以上となること。(告示第6第2項第九号)

④免震材料の設計

(確認項目)

  • 上部構造の総重量の1.3倍に相当する荷重と、上部構造の地震力との和により、免震材料に生ずる圧縮の応力度が、免震材料の材料強度を超えないこと。
  • 上部構造の総重量(積雪荷重を除く)の0.7倍に相当する荷重と、上部構造の地震力による引張力との和により、免震材料に生ずる圧縮の応力度が、0未満とならないこと。

(3)大臣認定を必要とする免震設計法

高さ60mを超える超高層建築物、および60m以下で時刻暦応答解析により安全性を確認した免震建築物は国土交通省の大臣認定を必要とします。

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