「建築基準法施行令の改正に向けた検討案について(概要)」2019/1/25up
平成30年12月7日、建築基準法施行令の改正に向けた検討案の概要について、意見募集が実施されました*。この概要には、改正建築基準法に関する説明資料等ではあまり示されていなかった建築基準法施行令の改正部分についても、改正の概要が掲載されています。今回は、その一部について紹介します。なお、以下に示す内容は「検討案」を基にしたものであり、実際に公布される際には異なるものとなる可能性があります。 *(「建築基準法の一部を改正する法律の施行に伴う建築基準法施行令の改正に向けた検討案(総則・単体規定関係)に関する意見募集について」 募集期間:平成30年12月7日〜平成31年1月5日) 法21条(大規模の建築物の主要構造部等)関連大規模な木造建築物等に関する規定です。改正法(「建築基準法の一部を改正する法律」平成30年6月公布(以下、共通))により下表のような改正が行われていますが、改正後のただし書きによる「延焼防止上有効な空地」の技術的基準として、「当該建築物の敷地内に設けられた空地又は防火上有効な公園、広場その他の空地で、当該建築物の各部分から当該空地の境界線までの水平距離が、当該各部分の高さに相当する距離以上のものであることとする。」が示されました。(平成31年6月頃の施行予定(以下、共通))
法27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)関連改正法により「耐火建築物等としなければならない特殊建築物」の対象の合理化が行われました。法27条1項1号では、法別表第一(ろ)欄に掲げる階を同表(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供するものの中から、政令で定める用途に供するもので警報設備を設けた一定の建築物は、耐火建築物等とすることを要しないこととしました。この政令で定める用途は、次の通りです。
また、「警報設備」についての技術的基準は、次の通りです。
階段の安全措置に関する技術基準(令112条9項(竪穴区画)、令121条(二以上の直通階段))前述の耐火建築物等としなければならない特殊建築物の合理化により主要構造部が準耐火構造でない建築物となるものについて、新たに竪穴部分の措置等を定めています。 階数が3で延べ面積が200u未満の建築物であって法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途に供するもの(以下「小規模( 二)項建築物」という。)のうち、主要構造部が準耐火構造でないものについては、次に掲げる用途に応じて、竪穴部分とそれ以外の部分をそれぞれ次に掲げる防火設備等で区画することとするものです。
また、「小規模( 二)項建築物」のうち、病院、診療所及び児童福祉施設等であって、前述の防火設備等により区画されている場合に限り、2以上の直通階段の設置を要しないものとなります。 界壁に関する技術基準(法30条、令114条関連(長屋又は共同住宅の各戸の界壁))法30条の改正により、長屋又は共同住宅の界壁(遮音性能)は、現行基準である小屋裏又は天井裏に達するものの他、「隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために必要とされる政令で定める基準を満たした天井」とすることが可能になりました。この政令で定める技術的基準は、現行法で壁に求めている基準(令22条の3)とすることが示されました。 また、令114条1項の区画については、現行基準である「準耐火構造とし、かつ、小屋裏又は天井裏に達するようにすること」を、学校等の防火上主要な間仕切壁(令第114 条第2項)の例に倣い、代替措置の適用が可能となります。
界壁に関する技術基準(法35条の3関連(無窓の居室等の主要構造部))政令で定める窓その他の開口部(1/20採光、又は避難上有効な一定の開口部(令111条))を有しない居室は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない基準について、従来は対象となっていた居室のうち、「非常用の照明装置の設置を必要としない居室(一戸建ての住宅等)であって、かつ、非常用の進入口の設置を必要としない階(2階以下の階等)にある居室」については、規制の対象外となります。 アトリウム等における面積区画の適用の合理化(令112条1項関連)アトリウム等の物品の存置が想定されない大空間を対象に、廊下などの出火のおそれの少ない室を緩衝帯として居室が面している場合については、一定の基準(居室から上階の居室への延焼を防止するために必要な廊下幅や開口幅などの組み合わせなど)に該当する空間をもって、面積区画を構成する特定防火設備とみなされることになります。現行の1,500u(スプリンクラー設備等による緩和適用の場合は3,000u)ごとに防火区画を設置する規定の見直しになります。 異種用途区画の適用(令112条12項関連)改正法の一部が9月に施行され、これに伴う関係政令の整備により旧令112条12項(建築物の一部が法24条各号のいずれかに該当する場合の異種用途区画)は廃止されました。現行の令112条12項は、旧13項の規定である「建築物の一部が法27条1項各号、2項各号又は3項各号のいずれかに該当する場合の異種用途区画」となりますが、この令112条12項についても「互いに異なる用途が接する部分であっても、警報設備の設置などにより、一方の用途で火災が発生した場合に、他方の用途における在館者が火災を覚知して迅速に避難することができるように措置した部分は防火区画を要しないものとする。」ことが示されました。具体的な措置の内容については、未だ示されていません。 防火床の基準(令113条関連)法26条の改正により、1,000u以内ごとに区画する方法として「防火壁」に加えて「防火床」が追加されました。この度、防火床の技術的基準が示されました。(当該技術的基準については、防火壁を含めて必要な性能を明確化した基準(性能規定)とする)
排煙設備の設置に関する別建築物の基準(令126条の2、令137条の14関連)現行基準では「開口部のない準耐火構造の床若しくは壁又は遮煙性能を有する防火設備で区画すること」を条件としていますが、これに加えて「蓄煙の効果を有する天井の高いアトリウム等の大空間を介して接続する建築物の部分」も別の建築物とみなすことが追加されます。既存不適格建築物の増築等でも同様に、排煙設備の規定の適用上、別の建築物とみなすことができる部分(独立部分)となります。なお、天井の高いアトリウム等についての具体的な内容は、未だ示されていません。 敷地内通路の幅員(令128条関連)現行基準では、建築物の規模に関わらず一律に幅員1.5m以上の敷地内通路を設けることとしています。この度、階数3以下かつ延べ面積200u未満の小規模な建築物については、在館者が少なく、敷地内通路における滞留のおそれが少ないことから、90cm以上の幅員が確保されているものを認めることとされました。小規模な3階建て戸建住宅などで、敷地内通路の幅員が緩和されることになります。 内装制限の代替措置(令128条の5関連)現行基準では、スプリンクラー設備等及び排煙設備を設置する措置のみを代替措置の対象としています。この度、火災の発生時に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下を生じさせないようにする避難安全性の確保という観点から、有効に煙を蓄積することができる天井の高さの効果を考慮できるものとする規定が追加されます。具体的な天井の高さ等については、現在のところ示されていません。 避難安全検証法(検証方法の追加)避難安全検証法の検証方法について、新たに次の2つの方法が追加されます。 @防火区画単位による検証方法 現行規定において検証法の範囲は、「建築物」又は「建築物の階」を対象としています。この度、これに加えて「区画部分(一の階にある居室その他の建築物の部分で、準耐火構造の床若しくは壁又は遮煙性能を有する防火設備で区画されたもの)」単位での検証が可能になります。この場合に適用除外できる規定は、「建築物」又は「建築物の階」を対象とした場合の適用除外できる規定のうち、対象となる防火区画について「排煙設備の設置(令126条の2及び令126条の3)」及び「内装制限(令第128 条の5(2項、6項及び7項並びに階段に係る部分を除く。))」のみが対象となります。 Aより高度な検証方法 現行規定では、「検証対象となる部分に滞在する在館者が避難を終了するまでに要する時間(避難時間)」が、「検証対象となる部分における煙又はガスが避難上支障のある高さまで降下に要する時間(煙降下時間)」を超えないことを確かめることとしています。この度、より精度の高い検証を可能とする方法として、煙又はガスの発生量の時間変化を見込むものとして、避難時間が経過した時点における煙又はガスの降下位置を算出して、その高さが避難上支障のある高さを下回らないものであることを確かめる方法を可能とすることが示されました。この検証方法については、検証単位が「建築物」「建築物の階」「防火区画」のいずれであっても適用可能なものとして位置付けられる予定です。なお、具体的な計算方法等については、現在のところ示されていません。 防火地域、準防火地域内の建築物に関する技術的基準(法61条〜関連)現行規定では、防火地域内の建築物(法61条)、準防火地域内の建築物(法62条)などで、その建築物の規模により耐火建築物又は準耐火建築物等とすることが規定されていますが、改正法では、これらが法61条に集約されました。改正後の法61条では、防火地域又は準防火地域内にある建築物は、政令で定める基準に適合するものとしなければならないとする内容となり、具体的な基準は政令で示すこととなりました。この度、政令の内容が示されましたが、防火地域、準防火地域内の建築物について求められる従前の基準は、そのまま引き継がれています(例:防火地域内にある階数3以上の建築物は「耐火建築物」)。改正法では、周囲への延焼リスクを低減することができる建築物は、耐火建築物等としなくても良いこととする改正がなされていますが、その具体的な内容については、未だ示されていません。
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