「建築基準法施行令の改正に向けた検討案の一部について(小規模建築物に対して制限の緩和される内容)」

2019/3/25up

 

 平成31年2月26日に、建築基準法施行令の改正に向けた検討案の概要について、国土交通省による説明会が実施されました。今回は、その一部で小規模建築物に対して制限の緩和される内容について紹介します。現在、既存建築ストックの活用が大きな問題になっており、空き家の総数はこの20年で1.8倍に増加しています。そのため用途変更等による利活用が極めて重要になっています。

一方で、その活用に当たっては、建築基準法に適合させるために、大規模な工事が必要となる場合があることが課題となっていました。そこで、戸建住宅等の福祉施設等への用途変更に伴う制限の合理化を図るため、空き家等を福祉施設・商業施設等に用途変更する際に、大規模な改修工事を不要とするとともに、手続きを合理化し、既存建築ストックの利活用を促進することになりました。なお、以下に示す内容は「検討案」を基にしたものであり、実際に公布される際には異なるものとなる可能性があります。

 

○小規模建築物に対する規制が緩和されて用途変更が進め易くなる

●戸建住宅から他用途への転用の際の手続き不要の対象が拡大される

●3階建の戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化

出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.43

●警報設備を設けた場合に耐火建築物等とすることを要しない用途について

見直しの考え方

  • ◆今般の法改正では、法第27条第1項第1号を改正し、3階以上を別表第1(い)欄(一)項〜(四)項に掲げる用途のうち、階数3かつ延べ面積が200u未満の場合には、耐火建築物等としなくてよいこととしたところ。
  • ◆ただし、3階を法別表第1(い)欄(二)項に掲げる用途で政令で定めるものに供するものについては、逃げ遅れを防止する観点から、警報設備を設けたものに限ることとしている。
  • ◆ここで、法別表第1(い)欄(二)項に掲げる用途のうち、就寝利用する用途については、逃げ遅れが生じうることから、警報設備を要することとする必要がある。

見直し内容

  • ◆法別表第1(い)欄(二)項に掲げる用途のうち、警報設備の設置を要する用途として政令で定めるものは、「病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎及び児童福祉施設(就寝の用に供するものに限る。)」とする。

出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.46

●法第27条第1項の規定に基づく建築物で、小規模建築物に関する基準について

○法第27条第1項の規定に基づく建築物で、3階建・200u未満の建築物であって耐火構造としないものについては、建築物の利用状況に応じて、以下の対策が必要となる。

 

  • @就寝利用する建築物の場合は、警報設備の設置
  • A就寝利用する建築物や自力非難困難者が利用する建築物の場合は、壁穴部分への間仕切壁・戸(壁穴区画)の設置
対象建築物 警報設備 壁穴区画
設備基準 構造基準 パターン@ パターンA
・病院
・有床診療所
・児童福祉施設等
(就寝利用)
・天井・壁の屋内面
・天井裏
・火災の発生を有効かつ速やかに報知 ・間仕切壁
・防火設備(10分)
・スプリンクラー等の消火設備
 
・ホテル
・旅館
・共同住宅
・寄宿舎
・天井・壁の屋内面
・天井裏
・火災の発生を有効かつ速やかに報知 ・間仕切壁
・戸
・児童福祉施設等
(通所利用)
(不要) (不要) ・間仕切壁
・戸

出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.47

●小規模建築物における警報設備の技術的基準について

見直しの考え方

  • ◆3階建てで延べ面積が200u未満の建築物の、就寝用途の建築物については、火災時に避難の遅れが生じないよう、警報設備を設けたものに限って、耐火建築物等とすることを要しないこととしたところ。
  • ◆なお警報設備については、消防法令において、一定の建築物(防火対象物)に設置することが義務付けされているところ。
    今般、建築基準法においては延べ面積200u未満の小規模な建築物を対象とするため、消防法令における設置義務があるとは限らないが(例えば共同住宅は500u以上に設置義務)、警報設備の基準は消防法令と整合をとる必要がある。
参考:消防法令上の警報設備の区分
警報設備の種類 根拠となる規定
自動火災報知設備 消防法施行令第7条第3項第1号
特定小規模施設用
自動火災報知設備
特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令第2条第2号

見直し内容

○警報設備の設置・構造に関する基準について、下記の項目に関する基準を定める。

  • 警戒区域
  • 感知器の設置箇所
  • 非常電源
  • 天井高等に応じた感知器の種別 など

○具体的には、消防法令における自動火災報知設備に関する技術的基準 (消防法施行令第21条)、特定小規模施設用自動火災報知設備に関する技術的基準(特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令)などを踏まえた内容について検討。

出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.47

◆小規模建築物における竪穴区画の見直しについて

見直しの考え方

  • ◆今般、法第27条第1項の改正により、3階建てで200u未満の建築物の一部については、耐火建築物等とすることを要しないこととなったため、現行の令第112条第9項の規定による竪穴区画は求めされないこととなる。
  • ◆しかし、これらの建築物であっても、法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途に供するものについては、利用方法(就寝用途:火災の覚知が困難)や在館者の特性(高齢者等:自力避難が困難)を踏まえ、階段室等の竪穴部分を火災や煙から防護し、安全に避難できる措置を確保するために、引き続き竪穴部分を求める必要がある。

見直し内容

  • ◆法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途に供する建築物であって、3階建てで200u未満のものについては、間仕切壁又は戸で竪穴部分を区画しなければならないこととする。
  • ◆上記の建築物のうち、3階を病院、診療所(患者の就寝施設があるものに限る。)又は児童福祉施設等(就寝の用に供するものに限る。)の用途に供する建築物については、間仕切壁又は以下の防火設備で竪穴部分を区画しなければならないこととする。
    @スプリンクラー等の消火設備が設けられた建築物:防火設備(10分間遮炎性能)
    ※消火設備の作動により、10分間遮炎性能があれば、20分間の火災に耐えることが可能。
    A上記@以外の建築物:法第2条第9号の2ロに規定する防火設備(20分間遮炎性能)

出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.50

◆10分防火設備について

○10分防火設備(遮炎性能)については、以下の場合に設置が求められる見込み。

  • @200u以下・3階建の小規模建築物(病院等)において、耐火建築物としない場合に必要となる準堅穴区画の区画材として用いる場合
  • A避難安全検証(煙高さ判定法)において、区画部分又は階にある居室について安全検証を行う際の前提条件として、居室の区画材として用いる場合

○具体の使用については、オフィス等で用いられる軽量ドアを代表的なものとして位置づける。

出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.51

◆小規模建築物における直通階段の設置の合理化について

背景

  • ◆二以上の直通階段の設置義務については、「用途」及び「階面積」に応じて定められており、それ以外の設計上の措置(建築物全体の規模、スプリンクラー設備など)が評価されていない。
  • ◆特に、小規模な福祉施設については、2階建て・3階建てであっても、階面積が50u超となる場合には、一律に2以上の直通階段が必要とされている。(第4号)

見直しの考え方

  • ◆階段の安全確保に係る措置がとられているものについては、必ずしも二以上の直通階段を設置しなくとも、避難安全性が確保されているといえる。
  • ◆なお、今般の改正で、耐火建築物ではない福祉施設等のうち小規模なものについては、竪穴区画を求めることとの整合性を図る必要がある。

見直し内容

  • ◆福祉施設等(第4号)について、3階建て以下で延べ面積200u未満の小規模な建築物であって、階段の安全確保に係る措置がとられているものには、二以上の直通階段の設置は不要とする。

出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.53

○小規模建築物に対する規制が緩和されて駐車場などが作り易くなる。

●小規模建築物に係る敷地通路の幅員の見直しについて

背景

  • ◆法第35条に掲げる建築物(※)の敷地内には、屋外避難階段及び避難の用に供する出口(第125条第1項の出口)から、道等の空地に通ずる幅員1.5m以上の通路を設けなければならない。
  • (※)@法別表第一(い)欄(一)〜(四)項に掲げる用途に供する特殊建築物、A階数3以上の建築物、B第116条の2に規定する無窓居室を有する建築物、C延べ面積1,000u超の建築物
  • ◆3階建て以下で小規模な建築物は、狭小敷地に立地するものが多いが、規模が小さい建築物であっても一律に本規制の対象となるため、建築物や敷地の規模に比して、過剰に広い幅員を確保する必要がある。

見直しの考え方

  • ◆敷地内通路については、建築物から在館者が一斉に避難した場合に、通路の途中で滞留が生じ、安全な空地に至るまでの避難に支障を来すことがないようにするために、幅員を1.5m以上とすることとしている。
  • ◆したがって、小規模な建築物であれば在館者が少ないことから、滞留が発生しにくく、必ずしも敷地内通路の幅員を1.5m以上としなくとも本規定の目的を達成することができる。
  • ◆これまでの歩行実験等から得られた知見を踏まえると、具体的には、階数3以下で延べ面積が200u未満の建築物であれば、敷地内通路の幅員を90cm以上確保することで、避難中に通路での滞留が発生しないことが分かっている。

見直し内容

  • ◆階数が3以下で延べ面積が200u未満の小規模な建築物については、敷地内通路の幅員を90cm以上確保すればよいこととなる。

出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.53

出典: 平成30年改正建築基準法に関する説明会資料