建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施行について

2020/4/27up

令和2年4月1日に政令改正第二弾が施行されました。建築基準法施行令の改正に伴い建築基準法施行規則や告示なども改正、制定されました。その一部について概要を紹介します。

■窓その他の開口部を有しない居室の範囲の合理化(令第111 条第1項関係)

建築基準法第35条の3の規制対象となる窓その他の開口部を有しない居室(「無窓居室」)のうち、避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室などで、その居室の床面積や屋外への出口の一に至る歩行距離、警報設備の設置など、避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除くことになりました。

具体的な内容は、「主要構造部を耐火構造等とすることを要しない避難上支障がない居室の基準を定める件(令和2年国交省告示249号)」に警報設備の設置、居室の規模、避難距離の制限などが定められています。なお、今回は建築物の火災時の安全性確保の観点での合理化であり、住宅の居室などは、今まで通り原則として採光が必要ですのでご注意ください。

■吹抜き等の空間を設けた場合における面積区画の合理化(令第112 条第3項関係)

主要構造部を耐火構造とした建築物の二以上の部分が、一定規模以上の空間が確保されている吹抜きなどの部分(特定空間部分)に接する場合で、その二以上の部分が通常の火災時において相互に火熱による防火上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、その二以上の部分と特定空間部分とが特定防火設備で区画されているものとみなして、令第112条第1項の規定を適用することになりました。

その構造方法の具体的な内容は「通常の火災時において相互に火熱による防火上有害な影響を及ぼさない建築物の二以上の部分の構造方法を定める件(令和2年国交省告示522号)」に定められています。

二以上の部分が、特定空間部分に接するイメージ

(二以上の部分が、特定空間部分に接するイメージ)

特定空間部分として想定する用途は、火熱による防火上有害な影響を及ぼすことを防止するため、玄関ホール、ロビーその他これらに類するものとされており、これら以外の用途に供する建築物の部分が当該部分に含まれることは認められません。特定空間部分は、高さが6m以上の吹抜きとなっている部分であることとされています。また、二以上のみなし防火区画部分が相互に6m以上の離隔距離を確保することを求めています。

二以上のみなし防火区画部分が相互に6m以上の離隔距離を確保することを求めています

なお、令第112 条第3項の規定の適用によって、面積区画として空間部分と二以上の部分との間に耐火構造の壁等の区画材を設ける必要はなくなりますが、竪穴区画は別途要求されます。区画材を設けずに建築する場合には、これとは別に全館避難安全検証法による全館避難安全性能の確認も必要になりますのでご注意ください。

■警報設備の設置等の措置が講じられた場合における異種用途区画の合理化(令第112条第18 項関係)

建築基準法第27 条第1項各号、第2項各号又は第3項各号のいずれかに該当する部分(特定用途部分)は、その部分とその他の部分とを令第112条18項の規定により異種用途区画することが必要でしたが、国土交通大臣が定める基準に従い、警報設備を設けることその他これに準ずる措置が講じられている場合においては、当該区画が不要となりました。基準の具体的な内容は「警報設備を設けることその他これに準ずる措置の基準を定める件(令和2年国交省告示250号)」に定められています。
告示の対象とする一定の用途に供する特定用途部分とこれに隣接する部分には、避難安全性確保の観点から、法別表第1(い)欄(一)項に掲げる用途又は病院、診療所(患者の収容施設があるものがあるもの)、児童福祉施設等(通所のみに利用されるものを除く)などの用途に供する部分を設けることはできません。また、警報設備を設ける等の措置を講じた場合にあっても、従来通り床による異種用途区画は必要です。

なお、特定用途部分と特定用途部分に隣接する部分は、両部分の在館者が火災時に一体的な避難行動をとることができるよう、両部分の在館者により一体的に利用されるものであり、かつ、同一の管理者により管理されていることが望ましいとされています。

■二以上の直通階段の設置基準の合理化(令第121 条第4項関係)

階数が3以下で延べ面積が200u未満の小規模な建築物で一定の用途のものは、直通階段の部分とそれ以外の部分とを、その用途に応じて規定された間仕切壁や防火設備により区画した場合に、二以上の直通階段の設置を要さないこととなりました。区画に用いる防火設備については、令第112条第19項第2号に規定する構造(遮煙性能)が求められます。

また、令第121条第4項第2号に規定する戸については、令第112 条第13項に規定する区画に用いられる戸と同様のものを想定しており、火災時の接炎によって直ちに火炎が貫通するおそれのあるもの(ふすまや障子のほか、普通板ガラス、厚さ3mm程度の合板等で造られたものなど)は対象外としています。

■排煙設備の設置基準の合理化(令第126 条の2第2項関係)

建築物の二以上の部分の構造が通常の火災時において相互に煙又はガスによる避難上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものである場合における当該部分については、それぞれ別の建築物とみなし、令第5章第3節(排煙設備)の規定を適用することとされました。

なお、具体的な告示については、5月下旬の公布、施行予定とされており、5月9日までパブリックコメントの募集が行われています。

■敷地内に設けるべき通路の幅員の合理化(令第128 条関係)

建築基準法第35条に掲げる建築物の敷地内には、屋外避難階段及び避難の用に供する出口から、道又は空地に通ずる幅員1.5m以上の通路を設けなければならないこととしていますが、階数が3以下で延べ面積が200u未満の建築物については、敷地内の通路の幅員を90p以上確保すればよいことになりました。

敷地内に設けるべき通路の幅員の合理化

■特殊建築物等の内装制限の合理化(令第128 条の5第7項関係)

自動式のスプリンクラー設備等と令第126条の3の規定に適合する排煙設備を設けた場合についてのみ、令第128条の5第1〜6項までの内装制限の規定を適用しないこととされていましたが、火災が発生した場合に避難上支障がある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として、床面積、天井の高さ、消火設備、排煙設備の設置の状況や構造などを考慮して国土交通大臣が定めるものについて、内装制限の規定を適用しないことになりました。

具体的な建築物の部分の要件については、「壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにすることを要しない火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分を定める件(令和2年国交省告示251号)」に規定されています。面積、天井高さ、区画、用途、警報設備、スプリンクラーの設置状況、避難の安全性などから緩和の要件が定められています。

■避難安全検証法の見直し(令第128 条の6、第129 条及び第129 条の2関係)

@ 区画避難安全検証法の追加
従来の階避難安全検証法及び全館避難安全検証法に加え、建築物の区画部分に対して区画避難安全検証法を適用し、当該区画部分が区画避難安全性能を有することが確認されたものについては、令第126条の2、第126条の3、第128条の5(第2項、第6項及び第7項並びに階段に係る部分を除く)の規定を適用しないことになりました。区画避難安全検証法に関する算出方法等は、「区画部分からの避難に要する時間に基づく区画避難安全検証法に関する算出方法等を定める件(令和2年国交省告示509号)」に規定されています。算方法等は「階避難安全検証法に関する算出方法等を定める件(平成12年建設省告示1441号)」と同様です。

なお、煙の高さによる避難安全検証法の追加については、検証する方法を告示において規定できることとし、具体的な告示については、今後、技術的な検討を踏まえて定める予定とされています。

■その他(建築基準法施行規則の改正について)

政令等の改正に伴い、確認申請書の様式(規則第1条の3)における確認申請に添付する図書や明示すべき事項が改正されています。また、確認申請書(第二号様式)では、第四面【5】欄〜【7】欄が改正されました。建築計画概要書(第三号様式)では、第二面【18】欄に「建築基準法第12条第3項の規定による検査を要する防火設備の有無」という項目が新設されています。
今後の建築確認では、確認申請書の様式等の改正についてもご注意ください。

出典:国土交通省資料(建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施行について(技術的助言))