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建築基準法の一部改正について

2022/07/15up

2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向けて、エネルギー消費量の約3割を占める建築物分野における省エネ対策の徹底と、吸収源対策としての木材利用拡大等を通じて脱炭素社会の実現に寄与するなどの目的で、令和4年6月17日に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されました。この法律に含まれている建築基準法の一部改正について、その概要を紹介します。

1.建築確認を要する木造の建築物の範囲の拡大

  • 木造建築物に係る建築確認の対象は、2階建て以上または延べ面積200u超の建築物に見直されます。建築確認検査の審査省略については、平家かつ延べ面積200u以下の建築物が対象となります。
  • 建築確認および審査の対象は、非木造と統一化されて省エネ基準の審査対象も同一の規模となります。

2.防火に関する制限の合理化

  • 3,000u超の大規模木造建築物については、現行の耐火構造とする方法や3,000uごとに耐火構造体で区画する方法の他に、高い耐火性能の外壁等を設けることで周囲への延焼を制御可能にする方法や、細かな防火区画と大断面材の使用により区画内で火災を制御可能にする方法などが導入されます。
  • 建築物の階数や床面積等に応じて、壁、柱、床などの全ての部位に一律の耐火性能を要求している現行の基準について、防火上他と区画された範囲の木造化が可能になります。また、延焼を遮断する壁等を設ければ、防火上別棟として扱い、低層部分の木造化が可能になります。
  • その他、政令、告示改正により、階数に応じて要求される耐火性能基準を合理化して、例えば90分耐火性能等で対応可能な範囲を新たに規定することが予定されています。

3.構造に関する制限の合理化

  • 通常は構造計算が義務付けられていない小規模建築物について、高度な構造計算により構造安全性を確認している場合に、現行では建築確認に加えて構造計算適合性判定が必要ですが、改正により一定の条件によって構造計算適合性判定が不要となります。
  • 現行は高さ13m以下かつ軒高9m以下は、二級建築士でも設計できる簡易な構造計算(許容応力度計算)で建築可能ですが、この範囲が階数3以下かつ高さ16m以下に拡大されます。
  • 木造建築物での構造安全性を確保するために、構造計算が必要となる規模を引き下げて、現行の500u超から300u超に改正されます。

4.居室の採光に関する制限の合理化

  • 住宅の居室にあっては、必要な開口部の大きさを現行の1/7から、原則は1/7以上(政令で措置予定)としつつ、一定条件の下で1/10以上まで緩和することが可能になります(具体的な緩和条件等は、告示で規定される予定)。

5.容積率等に関する制限の合理化

  • 省エネ対策で設置した設備機器等に対して、容積率、建蔽率、高さの限度等の形態規制の特例許可等によって限度を超えることが可能になります。

6.一の敷地とみなすこと等による制限の緩和等の対象の拡大

  • 一の敷地とみなすこと等による制限の緩和等の対象について、大規模の修繕または大規模の模様替えをする建築物を追加する等の改正が行われます。

7.既存不適格建築物に関する制限の合理化

  • 既存不適格建築物について、増改築等を行う場合は、原則として建築物全体を現行基準に適合させることが必要ですが、安全性の確保等を前提として、増改築時等における防火・避難規定、集団規定(接道義務、道路内建築制限)の遡及適用の合理化を図る改正が行われます。

改正法は、公布の日から3年以内(規定によっては、2年以内または1年以内)に施行されます。今後は、各改正法の施行に向けて必要な政令や告示等が整備されていくことになります。

出典:
国土交通省 住宅局「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」