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令和5年4月1日に施行された改正法令等の概要

2023/4/21up

脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律等(令和4年6月17日公布)の一部、および関係政省令等の整備に関する政省令等が、令和5年4月1日に施行されました。また、建築基準法施行令の一部を改正する政令(令和5年2月10日公布)、およびこれに伴う施行規則の一部改正等も、令和5年4月1日に施行されました。
以下では、4月1日に施行されたこれら法令等のうち、主に建築確認に関わりのあるものを抜粋してその概要について紹介します。

■脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律等より

住宅の採光規定の見直し(法第28条関係)

住宅の居室における窓その他の開口部の採光に有効な面積は、その居室の床面積に対して1/7以上としなければならないとしていましたが、原則として1/7以上としつつ、床面において50ルックス以上の照度を確保することができる照明設備を設置する居室にあっては、1/10以上でよいこととなりました。

住宅等の機械室等の容積率不算入に係る認定制度の創設(法第52条第6項関係)

高効率給湯設備を対象とした法第52条第14項第1号の規定に基づく許可の実績が一定程度蓄積していること等を踏まえ、一定の要件を満たすものについては、建築審査会の同意を不要とする手続の合理化が行われました。

建築物の構造上やむを得ない場合における形態規制の特例許可の拡充(法第52条第14項、第53条第5項、第55条第3項および第58条第2項関係)

既存建築物のエネルギー消費性能を向上させるための改修工事等を行うことにより、容積率制限、建蔽率制限、高さ制限を超えてしまう場合であっても、建築物の構造上やむを得ない場合には、市街地環境を害しないものに限り、特定行政庁が特例許可を行うことで、必要最小限の範囲でこれらの制限を超えることも可能となりました。

一団地の総合的設計制度等の対象行為の拡充(法第86条、第86条の2および第86条の4関係)

断熱改修、防火改修または耐震改修等を行う場合にも、一団地の総合的設計制度等を活用することを可能とするため、法第86条、第86条の2および第86条の4において、大規模の修繕または大規模の模様替えを行う場合についても、特定行政庁が安全上、防火上および衛生上支障がない旨の認定等をした場合には、一団の土地の区域を一敷地とみなすこと等ができることとなりました。

■建築基準法施行令の一部を改正する政令等より

倉庫等に設ける一定の軒等に係る建蔽率規制の合理化(令第2条第1項第2号関係)

トラックからの積み卸し作業等を目的に設置された一定の要件に該当する軒等については、大規模なものであっても建蔽率が保護する空地の効果を減じないことが確認されたため、建蔽率の算定の基礎となる建築面積の算定に当たり、1メートルを超えて最大5メートルまで不算入とすることで、規制の合理化を図ることとなりました。不算入の対象となる軒等は、工場または倉庫の用途に供する建築物において専ら貨物の積み卸しその他これに類する業務のために設ける軒等であって、安全上、防火上および衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定める軒等(令和5年国土交通省告示第143号)に限られます。

中央管理方式の空気調和設備等に係る基準の見直し(令第20条の2第1号ニ、第129条の2の5第3項関係)

一酸化炭素への長期曝露による感覚運動能力の変化や認知能力への影響等との関連、冬季における室内温度と高齢者の血圧上昇との関連等の健康被害が報告されてきたことを踏まえ、WHO(世界保健機構)において、関係するガイドラインの見直しが行われるなど、健康被害防止に関する国際的な要請が高まっています。こうした状況を踏まえ、中央管理方式の空気調和設備等に係る基準が、一酸化炭素含有率については「100万分の10以下」から「100万分の6以下」に、温度については「17度以上28度以下」から「18度以上28度以下」に見直されました。

階数に応じて要求される耐火性能基準の合理化(令第107条関係)

法第2条第7号に規定する耐火構造に必要とされる性能として令第107条第1号に規定する非損傷性の要求時間は、最上階から数えた階数が5以上で9以内の階の壁(耐力壁である間仕切壁および外壁)、柱、床およびはりについては「2時間」から「1.5 時間」に、最上階から数えた階数が15以上で19以内の階の柱およびはりについては「3時間」から「2.5時間」に見直すことで規制の合理化が図られました。この改正に伴い、耐火構造の構造方法を定める件(平成12年建設省告示第1399号)において定める耐火構造の壁(耐力壁である間仕切壁および外壁)、柱、床およびはりの構造方法に、仕様の追加が行われています。また、今回追加された1.5時間の耐火性能を有する木造の壁、柱、床およびはりの仕様に係る防火被覆の留付等の方法は、技術的助言にて参考が示されています。

採光無窓居室から直通階段までの歩行距離制限等の合理化(令第111条第1項、第120条第1項関係)

令第120条第1項において、採光上有効な面積が居室の床面積の1/20以上の大きさの窓等を有しない居室(採光無窓居室)であって、避難上支障がないものについては、避難階以外の階における当該居室から直通階段までの歩行距離の上限を、採光無窓居室以外の居室と同等まで引き上げることを可能とする規制の合理化が図られました。
また、令第111条第1項において、直接外気に接する避難上有効な構造で、人が出入りできる程度の大きさの窓等を有しない居室または採光無窓居室であって、避難上支障がないものについては、当該居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料とする必要がないものとする規制の合理化が図られました。
令第120条第1項および令第111条第1項に係る合理化対象となる居室の基準は、それぞれ告示で示されています。(令和5年国土交通省告示第208号、令和2年国土交通省告示第249号)

出典:
○ 国土交通省「 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について
○ 国土交通省「建築基準法施行令の一部を改正する政令(令和5年政令第34号)について