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「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」ガイドライン案について

2023/7/25up

省エネ表示制度の根拠となる「建築物のエネルギー消費性能に関し販売事業者等が表示すべき事項および表示の方法その他建築物のエネルギー消費性能の表示に際して販売事業者等が遵守すべき事項(仮称)案(以下、告示案)」および「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(仮称)案(以下、ガイドライン案)」に関する意見募集が2023年6月16日〜2023年7月15日に実施されました。
今後、関連告示の公布とガイドライン(第1版)の公表が実施され、事業者向け周知活動が開始される予定です。
今回はパブリックコメントに先駆けて公表された「ガイドライン案」の内容についてご紹介します。

詳しくは国土交通省「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」をご覧ください。

■制度の目的・背景

本制度は、消費者・事業者(以下「消費者等」という。)が、建築物を購入・賃借する際に、その省エネ性能を把握し、性能の高低を比較検討することができるようにすることで、消費者等における建築物の省エネ性能への関心を高め、省エネ性能が高い建築物が選択されやすい市場環境を整備することを目的としています。

■法的な位置づけ等

建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律が改正されたことで従来からの省エネ性能表示の努力義務の規定に関し、新たに以下の措置を講じることとなりました。

  • 国土交通大臣は、建築物の省エネ性能について表示すべき事項や表示の方法その他遵守すべき事項を定め、告示する。
  • 国土交通大臣は、販売・賃貸事業者が上記の告示に従って表示していないと認めるときは、告示に従って表示すべき旨の勧告をすることができる。
  • 国土交通大臣は上記の勧告を受けた事業者が、その勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
  • 国土交通大臣は、上記の勧告を受けた事業者が正当な理由なく、その勧告に係る措置をとらなかった場合において、建築物のエネルギー消費性能の向上を著しく害すると認めるときは、社会資本整備審議会の意見を聴いた上で、勧告に係る措置をとるよう命令を行うことができる。

なお、新設された勧告・公表・命令の措置については、制度の施行後当面は、事業者の取組状況による社会的な影響が大きい場合等に必要な措置を講じることにより表示の適正化を図ることとされています。

■制度の対象となる事業者

1−1:建築物の販売を行う事業者

建築物の販売(売買)を事業として行っている場合において、売主となる者を指すもの。事業として行っているか否かは、反復継続的に建築物の販売を行っているか等を踏まえて判断。

(例)住宅の所有者が一度限り、持家を売却する場合は、当該所有者は「建築物の販売を行う事業者」には該当しないものと考えられます。

1-2:建築物の賃貸を行う事業者

建築物の賃貸(貸借)を事業として行っている場合において、貸主となる者を指すもの。販売と同様に、事業として行っているか否かは、反復継続的に建築物の賃貸を行っているか等を踏まえて判断。

(例)アパート・マンションの所有者(オーナー)が、反復継続的に賃貸を行っている場合は、個人・法人の如何によらず、「賃貸を行う事業者」に該当するものと考えられます。

(例)サブリース住宅の場合
@建物所有者とサブリース事業者間での賃貸(特定賃貸借)
Aサブリース事業者と入居者間での賃貸(転貸借)が行われ、建物所有者が反復継続的に賃貸を行っている場合、一般に、@建物所有者はサブリース事業者に対し、 Aサブリース業者は入居者に対し、それぞれ表示する努力義務を負うものと考えられます。

ガイドライン案では建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示の実施にあたって、努力義務の対象である販売・賃貸事業者のみならず、販売・賃貸事業者から委託を受けた多様な主体が関わることが想定され、省エネ性能の表示の実務において想定される関係主体が担う役割や留意事項についても解説されています。

2:仲介事業者

建築物省エネ法上における直接の努力義務対象者ではないため、勧告等の措置の対象外となります。
売主・貸主との媒介契約に基づき、買主・借主の探索を行うにあたって、不動産広告の広告主となっている場合が多いため、販売・賃貸事業者からの委託を受けて、仲介事業者が仲介目的の広告等を行う際に、併せて省エネ性能の表示を行う場合が想定されます。この場合、販売・賃貸事業者は仲介事業者に対して、表示に必要な省エネ性能等の情報を提供し、表示を委託する旨を明らかにするよう留意する必要があります。

3:賃貸管理事業者

仲介事業者と同じく、建築物省エネ法上における直接の努力義務対象者ではないため、勧告等の措置の対象外となります。賃貸事業者からの委託を受けて、賃貸管理事業者が入居者募集を目的に広告等を行う際に、あわせて省エネ性能の表示を行う場合が想定されます。
この場合も販売・賃貸事業者は賃貸管理事業者に対して、表示に必要な省エネ性能等の情報を提供し、表示を委託する旨を明らかにするよう留意する必要があります。
賃貸住宅においては、賃貸事業者(貸主)が個人である場合など、貸主側の制度理解・習熟の程度もさまざまであることが想定されるところ、賃貸管理事業者と賃貸事業者との連携などにより、適切な対応を実施することが期待されます。

4:設計者等

建築物の設計内容(建築計画や外皮・設備の仕様等)は建築物の省エネ性能に影響を与えるものであるともに、省エネ基準適合義務をはじめとした制度への対応が求められることから、建築物の省エネ性能の評価については、一般に、建築物の設計者や、設計者から委託を受けた事業者等により実施される場合が想定されます。
このため、販売・賃貸事業者は、自ら設計を行う場合を除き、設計者に対し、省エネ性能の評価の結果とあわせて表示に用いるラベル・評価書(以下「ラベル等」という。)の取得および販売・賃貸事業者への提供を委託することが想定されることから、設計者等においては委託に基づきその役割を担うこととなります。

図 省エネ性能(ラベル)の伝達イメージ

省エネ性能(ラベル)の伝達イメージ1
省エネ性能(ラベル)の伝達イメージ2

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(仮称)案

■対象となる建築物

「販売または賃貸を行う建築物」は、売買または貸借の対象となる建築物を指します。

(例)努力義務の対象となることが想定される建築物
住宅:新築分譲住宅、新築分譲マンション、賃貸住宅、買取再販住宅等
非住宅:貸し事務所ビル、貸しテナントビル等

販売または賃貸の用に供しない建築物については、本制度の対象外となります。
具体的には、請負契約により建築されるものや、賃貸借契約によらず利用契約によるものなどが考えられます。

(例)努力義務の対象とならないことが想定される建築物
注文住宅、自社ビル、民泊施設(賃貸借契約によらないもの)、ウィークリーマンション等

法律上、省エネ性能表示に努める対象の建築物は、新築建築物に限定せず、既存建築物も含まれています。 既存建築物については、建築時に省エネ性能が評価されていない等の理由により、表示すべき事項等を表示できない場合が想定されることから、告示(案)においては、既存建築物については必ずしも告示に従った表示を求めないこととしています。 なお、本制度の施行後「新築建築物」として販売・賃貸時の表示が行われた後、当該建築物が再度販売・賃貸される場合(例:空室の発生に伴い新たな入居者・テナントを募集する場合、買取再販を行う場合 等)は、「新築建築物」の販売・賃貸に該当するため、販売・賃貸事業者は省エネ性能表示の努力義務を負うこととなります。

■表示すべき事項/表示の方法/遵守すべき事項

「表示すべき事項」として販売等を行う建築物の区分に応じて、一次エネルギー消費量・外皮性能(住宅のみ)の多段階評価としています。

① 販売等を行う建築物の区分に応じ、表示すべき事項
イ:非住宅建築物(複合建築物の非住宅部分を含む)一次エネルギー消費量の多段階評価
ロ:住宅(複合建築物の住宅部分を含む) 外皮性能の多段階評価+一次エネルギー消費量の多段階評価
ハ:複合建築物(棟単位)一次エネルギー消費量の多段階評価

② ①に掲げる事項に係る評価年月日

「表示の方法」として「 表示すべき事項」の表示方法は、建築物の区分に応じた表示様式(下表による)により表示することとし、販売等を行う建築物の広告等(新聞若しくは雑誌、ビラ、パンフレットその他これらに類する印刷物またはウェブサイトをいい、書面にあっては表示様式を表示できる一定の大きさ以上の大きさのものに限る。)に表示することしています。

建築物の区分 表示すべき事項 任意に表示できる事項
表示様式 再エネ利用設備が設置されている旨 再エネを考慮した一次エネルギー消費量の多段階表示 第三者評価を
受けた旨
住宅の目安
光熱費
非住宅建築物
(含:複合建築物の非住宅部分)
別記様式第1 別記様式第4を付加 別記様式第5 第三者評価に係るマークを付加
住宅
(含:複合建築物の住宅部分)
別記様式第2 別記様式第6 別記様式8を付加
複合建築物の全体
(棟単位)
別記様式第3 別記様式第7

別記様式については以下を参照ください。

@非住宅建築物(別記様式第1、第5関係) ① 非住宅建築物
非住宅建築物のラベルとして、再エネを考慮した一次エネルギー消費量の多段階表示を行わない場合は別記様式第1(表示様式)を、行う場合は別記様式第5(再生可能エネルギー表示様式)をそれぞれ用いることとしています。
複合建築物のうち非住宅部分の省エネ性能を表示する場合も、これを用い、エネルギー消費性能の多段階評価(6段階)は、6つの星(☆)の点灯(着色)により表示します。
星は、太陽光発電の創エネルギー(うち、当該建築物で消費される自家消費分)による削減量に当たるものと、それ以外の削減量に当たるものとの区別ができるよう、形状の差違(強調マーク付きの☆、強調マークの付かない☆)および注釈(強調マークの付かない☆に「太陽光発電分」と付記)により表現されます。
また、エネルギー消費性能の多段階評価において、ZEB 水準を達成している場合(事務所等用途の場合:強調マーク付きの☆5つ、病院等用途の場合:強調マーク付きの☆4つ)には、「ZEB 水準」にチェックを入れることにより、その旨を明示します。
再エネ利用設備が設置されている場合は、右上に別記様式第4による「再エネあり」のマークを付すことにより、その旨を示すことができることとしています。
・ 第三者評価を受けている場合は、左下に第三者評価に係るマーク(BELSマーク)を付すとともに、「ZEB」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の達成状況を示す(「ネット・ゼロ・エネルギー」にチェックを入れ、ZEBマークを付す)ことができることとしています。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(仮称)案

A住宅(別記様式第2、第6関係) ② 住宅
住宅のラベルとして、再エネを考慮した一次エネルギー消費量の多段階表示を行わない場合は別記様式第2(表示様式)を、行う場合は別記様式第6(再生可能エネルギー表示様式)をそれぞれ用いることとしています。
複合建築物のうち住宅部分の省エネ性能を表示する場合も、これを用います。
エネルギー消費性能の多段階評価は、別記様式第2では4つの星(☆)、別記様式第6では6つの星の点灯(着色)により表示することとしています。(=再エネを考慮しない一次エネルギー消費量の多段階表示の最大は4つの星) 星は、太陽光発電の創エネルギー(うち、当該建築物で消費される自家消費分)による削減量に当たるものと、それ以外の削減量に当たるものとの区別ができるよう、形状の差違(強調マーク付きの☆、強調マークの付かない☆)および注釈(強調マークの付かない☆に「太陽光発電分」と付記)により表現することとしています。
断熱性能の多段階評価は、1〜7の数字が付された住宅マークの点灯(着色)により表示することとしています。(=住宅性能評価における断熱等性能等級に準拠)
エネルギー消費性能および断熱性能の多段階評価において、ZEH水準を達成している場合(エネルギー消費性能:強調マーク付きの星3つ、断熱性能:5)には、「ZEH水準」にチェックを入れることにより、その旨を明示することとしています。
再エネ利用設備が設置されている場合は、右上に別記様式第4による「再エネあり」のマークを付すことにより、その旨を示すことができることとしています。
第三者評価を受けている場合は、左下に第三者評価に係るマーク(BELSマーク)を付すとともに、「ZEH」(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の達成状況を示す(「ネット・ゼロ・エネルギー」にチェックを入れ、ZEHマークを付す)ことができることとしています。
住宅の目安光熱費を表示する場合は、目安光熱費の年額(万円単位とし、小数点第二位以下を切り上げて表示)および実際の光熱費とは異なる旨の注記を、別記様式第8により表示することができることとしています。
なお、目安光熱費の算出に用いた燃料単価や設計二次エネルギー消費量については、ラベルの視認性を確保する観点から、ラベル上には掲載をしていないため、別途、評価書等により消費者等に対して情報提供が行われるよう、留意する必要があります。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(仮称)案

B複合建築物(別記様式第3、第7関係) ③ 複合建築物(棟単位)
複合建築物の棟単位の性能の表示に用いるラベルとして、再エネを考慮した一次エネルギー消費量の多段階表示を行わない場合は別記様式第3(表示様式)を、行う場合は別記様式第6(再生可能エネルギー表示様式)をそれぞれ用いることとしています。
複合建築物のラベルでは、「ZEH水準」「ZEB水準」や「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)」の達成状況についての表示は行われません(これらは住宅部分または非住宅部分の性能により判定されるため)。
複合建築物においてこれらの表示を行いたい場合には、当該建築物を住宅部分と非住宅部分に区分し、それぞれの性能について①非住宅建築物のラベルと②住宅のラベルを用いて表示することとなります。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(仮称)案

■ラベル表示の手順(案)

【全体の流れ】

建築物の販売・賃貸時の広告等への省エネ性能のラベル表示は、大きく、以下のような流れで実施される予定です。

(1)建築物の省エネ性能の評価
販売・賃貸事業者または設計委託を受けた建築士等において、建築物の省エネ性能を評価します。
省エネ性能の評価については、WEBプログラムまたは仕様基準を用いて行います。

(2)ラベルの取得
(1)の結果に基づき、広告等への表示に用いるラベルを取得します。

(3)広告等へのラベルの掲載
取得したラベルについて、販売・賃貸時の広告等に掲載します。
広告等へのラベルの掲載については、(1)販売・賃貸事業者が自ら広告表示を行う場合と(2)自ら広告表示は行わず、仲介事業者等に委託して行う場合が考えられます。

図 広告等へのラベルの掲載に至るまでの流れ

図 広告塔へのラベルの掲載に至るまでの流れ

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(仮称)案

(参考)広告等への掲載イメージ

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(仮称)案