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「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」ガイドライン発表

2023/7/25up
2023/10/19更新

2050年カーボンニュートラル、2030年温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現に向けて、2022年6月に建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律が改正され、建築物の販売・賃貸時の省エネ性能の表示について制度が強化されました。
これを受けて、改正法に基づく表示ルール、制度の施行に向けた表示の促進方策として「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」が2024年4月1日より施行されます。

省エネ表示制度の根拠となる「建築物のエネルギー消費性能に関し販売事業者等が表示すべき事項および表示の方法その他建築物のエネルギー消費性能の表示に際して販売事業者等が遵守すべき事項(以下、告示)」および「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(以下、ガイドライン)」が9月25日付で国土交通省より発表されました。また9月26日よりガイドライン(第1版)の解説資料および事業者向けの解説動画が特設ページにて配信が開始されました。

詳しくは国土交通省「建築物省エネ法について 省エネ性能表示制度 特設ページ」をご覧ください。

T.制度の目的・背景

本制度は、消費者・事業者(以下「消費者等」という。)が、建築物を購入・賃借する際に、その省エネ性能を把握し、性能の高低を比較検討することができるようにすることで、消費者等における建築物の省エネ性能への関心を高め、省エネ性能が高い建築物が選択されやすい市場環境を整備することを目的としています。

U.法的な位置づけ等

建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律が改正されたことで従来からの省エネ性能表示の努力義務の規定に関し、新たに以下の措置を講じることとなりました。

  • 国土交通大臣は、建築物の省エネ性能について表示すべき事項や表示の方法その他遵守すべき事項を定め、告示する。
  • 国土交通大臣は、販売・賃貸事業者が上記の告示に従って表示していないと認めるときは、告示に従って表示すべき旨の勧告をすることができる。
  • 国土交通大臣は上記の勧告を受けた事業者が、その勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
  • 国土交通大臣は、上記の勧告を受けた事業者が正当な理由なく、その勧告に係る措置をとらなかった場合において、建築物のエネルギー消費性能の向上を著しく害すると認めるときは、社会資本整備審議会の意見を聴いた上で、勧告に係る措置をとるよう命令を行うことができる。

なお、新設された勧告・公表・命令の措置については、制度の施行後当面は、事業者の取組状況による社会的な影響が大きい場合等に必要な措置を講じることにより表示の適正化を図ることとされています。

V.制度の対象となる事業者

出典:省エネ性能表示制度事業者向け概要資料

(1)−1「建築物の販売を行う事業者」

建築物の販売(売買)を事業として行なっている場合において、売主となる者を指すもの。事業として行なっているか否かは、反復継続的に建築物の販売を行なっているか等を踏まえて判断。

(例)住宅の所有者が一度限り、持家を売却する場合は、当該所有者は「建築物の販売を行う事業者」には該当しないものと考えられます。

(1)−2「建築物の賃貸を行う事業者」

建築物の賃貸(貸借)を事業として行なっている場合において、貸主となる者を指すもの。販売と同様に、事業として行なっているか否かは、反復継続的に建築物の賃貸を行なっているか等を踏まえて判断。

(例)アパート・マンションの所有者(オーナー)が、反復継続的に賃貸を行なっている場合は、個人・法人の如何によらず、「賃貸を行う事業者」に該当するものと考えられます。

(例)サブリース住宅の場合

①建物所有者とサブリース事業者間での賃貸(特定賃貸借)

②サブリース事業者と入居者間での賃貸(転貸借)が行われ、建物所有者が反復継続的に賃貸を行なっている場合

一般に、①建物所有者はサブリース事業者に対し、②サブリース業者は入居者に対し、それぞれ表示する努力義務を負うものと考えられます。

ガイドラインでは建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示の実施にあたって、努力義務の対象である販売・賃貸事業者のみならず、販売・賃貸事業者から委託を受けた多様な主体が関わることが想定され、省エネ性能の表示の実務において想定される関係主体が担う役割や留意事項についても解説されています。

(2)「仲介事業者」

建築物省エネ法上における直接の努力義務対象者ではないため、勧告等の措置の対象外となります。
売主・貸主との媒介契約に基づき、買主・借主の探索を行うにあたって、不動産広告の広告主となっている場合が多いため、販売・賃貸事業者からの委託を受けて、仲介事業者が仲介目的の広告等を行う際に、併せて省エネ性能の表示を行う場合が想定されます。この場合、販売・賃貸事業者は仲介事業者に対して、表示に必要な省エネ性能等の情報を提供し、表示を委託する旨を明らかにするよう留意する必要があります。

(3)「賃貸管理事業者」

仲介事業者と同じく、建築物省エネ法上における直接の努力義務対象者ではないため、勧告等の措置の対象外となります。賃貸事業者からの委託を受けて、賃貸管理事業者が入居者募集を目的に広告等を行う際に、あわせて省エネ性能の表示を行う場合が想定されます。
この場合も販売・賃貸事業者は賃貸管理事業者に対して、表示に必要な省エネ性能等の情報を提供し、表示を委託する旨を明らかにするよう留意する必要があります。
賃貸住宅においては、賃貸事業者(貸主)が個人である場合など、貸主側の制度理解・習熟の程度も様々であることが想定されるところ、賃貸管理事業者と賃貸事業者との連携などにより、適切な対応を実施することが期待されます。

(4)設計者等

建築物の設計内容(建築計画や外皮・設備の仕様等)は建築物の省エネ性能に影響を与えるものであるともに、省エネ基準適合義務をはじめとした制度への対応が求められることから、建築物の省エネ性能の評価については、一般に、建築物の設計者や、設計者から委託を受けた事業者等により実施される場合が想定されます。
このため、販売・賃貸事業者は、自ら設計を行う場合を除き、設計者に対し、省エネ性能の評価の結果とあわせて表示に用いるラベル・評価書(以下「ラベル等」という。)の取得および販売・賃貸事業者への提供を委託することが想定されることから、設計者等においては委託に基づきその役割を担うこととなります。

省エネ性能情報の伝達イメージ

省エネ性能情報の伝達イメージ 販売
省エネ性能情報の伝達イメージ 賃貸

出典:省エネ性能表示制度事業者向け概要資料

W.対象となる建築物

「販売または賃貸を行う建築物」は、売買または貸借の対象となる建築物を指します。

(例)努力義務の対象となることが想定される建築物

住宅 新築分譲住宅、新築分譲マンション、賃貸住宅、買取再販住宅 等
非住宅 貸し事務所ビル、貸しテナントビル 等

販売または賃貸の用に供しない建築物については、本制度の対象外となります。
具体的には、請負契約により建築されるものや、賃貸借契約によらず利用契約によるものなどが考えられます。

(例)努力義務の対象とならないことが想定される建築物

注文住宅、自社ビル、民泊施設(賃貸借契約によらないもの)、ウィークリーマンション等

努力義務の対象
努力義務の対象 推奨

出典:省エネ性能表示制度事業者向け概要資料

法律上、省エネ性能表示に努める対象の建築物は、新築建築物に限定せず、既存建築物も含まれています。
既存建築物については、建築時に省エネ性能が評価されていない等の理由により、表示すべき事項等を表示できない場合が想定されることから、告示(案)においては、既存建築物については必ずしも告示に従った表示を求めないこととしています。
なお、本制度の施行後「新築建築物」として販売・賃貸時の表示が行われた後、当該建築物が再度販売・賃貸される場合(例:空室の発生に伴い新たな入居者・テナントを募集する場合、買取再販を行う場合 等)は、「新築建築物」の販売・賃貸に該当するため、販売・賃貸事業者は省エネ性能表示の努力義務を負うこととなります。

X.表示すべき事項/表示の方法/遵守すべき事項

「表示すべき事項」として販売等を行う建築物の区分に応じて、一次エネルギー消費量・外皮性能(住宅のみ)の多段階評価としています。

①販売等を行う建築物の区分に応じ、表示すべき事項

イ 非住宅建築物(複合建築物の非住宅部分を含む) 一次エネルギー消費量の多段階評価

ロ 住宅(複合建築物の住宅部分を含む) 外皮性能の多段階評価+一次エネルギー消費量の多段階評価

ハ 複合建築物(棟単位)一次エネルギー消費量の多段階評価

② ①に掲げる事項に係る評価年月日

「表示の方法」として「 表示すべき事項」の表示方法は、建築物の区分に応じた表示様式(下表による)により表示することとし、販売等を行う建築物の広告等(新聞若しくは雑誌、ビラ、パンフレットその他これらに類する印刷物またはウェブサイトをいい、書面にあっては表示様式を表示できる一定の大きさ以上の大きさのものに限る。)に表示することしています。

様式については以下を参考ください。

国土交通省「建築物省エネ法について 省エネ性能表示制度 特設ページ

①非住宅建築物

非住宅建築物のラベルとして、再エネを考慮した一次エネルギー消費量の多段階表示を行わない場合は別記様式第1(表示様式)を、行う場合は別記様式第5(再生可能エネルギー表示様式)をそれぞれ用いることとしています。
複合建築物のうち非住宅部分の省エネ性能を表示する場合も、これを用い、エネルギー消費性能の多段階評価(6段階)は、6つの星(☆)の点灯(着色)により表示します。
星は、太陽光発電の創エネルギー(うち、当該建築物で消費される自家消費分)による削減量に当たるものと、それ以外の削減量に当たるものとの区別ができるよう、形状の差違(強調マーク付きの☆、強調マークの付かない☆)および注釈(強調マークの付かない☆に「太陽光発電分」と付記)により表現されます。
また、エネルギー消費性能の多段階評価において、ZEB 水準を達成している場合(事務所等用途の場合:強調マーク付きの☆5つ、病院等用途の場合:強調マーク付きの☆4つ)には、「ZEB 水準」にチェックを入れることにより、その旨を明示します。
再エネ利用設備が設置されている場合は、右上に別記様式第4による「再エネあり」のマークを付すことにより、その旨を示すことができることとしています。

  • 第三者評価を受けている場合は、左下に第三者評価に係るマーク(BELSマーク)を付すとともに、「ZEB」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の達成状況を示す(「ネット・ゼロ・エネルギー」にチェックを入れ、ZEBマークを付す)ことができることとしています。

②住宅

住宅のラベルとして、再エネを考慮した一次エネルギー消費量の多段階表示を行わない場合は別記様式第2(表示様式)を、行う場合は別記様式第6(再生可能エネルギー表示様式)をそれぞれ用いることとしています。
複合建築物のうち住宅部分の省エネ性能を表示する場合も、これを用います。
エネルギー消費性能の多段階評価は、別記様式第2では4つの星(☆)、別記様式第6では6つの星の点灯(着色)により表示することとしています。(=再エネを考慮しない一次エネルギー消費量の多段階表示の最大は4つの星)
星は、太陽光発電の創エネルギー(うち、当該建築物で消費される自家消費分)による削減量に当たるものと、それ以外の削減量に当たるものとの区別ができるよう、形状の差違(強調マーク付きの☆、強調マークの付かない☆)および注釈(強調マークの付かない☆に「太陽光発電分」と付記)により表現することとしています。
断熱性能の多段階評価は、1〜7の数字が付された住宅マークの点灯(着色)により表示することとしています。(=住宅性能評価における断熱等性能等級に準拠)
エネルギー消費性能および断熱性能の多段階評価において、ZEH水準を達成している場合(エネルギー消費性能:強調マーク付きの星3つ、断熱性能:5)には、「ZEH水準」にチェックを入れることにより、その旨を明示することとしています。
再エネ利用設備が設置されている場合は、右上に別記様式第4による「再エネあり」のマークを付すことにより、その旨を示すことができることとしています。
第三者評価を受けている場合は、左下に第三者評価に係るマーク(BELSマーク)を付すとともに、「ZEH」(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の達成状況を示す(「ネット・ゼロ・エネルギー」にチェックを入れ、ZEHマークを付す)ことができることとしています。
住宅の目安光熱費を表示する場合は、目安光熱費の年額(万円単位とし、小数点第二位以下を切り上げて表示)および実際の光熱費とは異なる旨の注記を、別記様式第8により表示することができることとしています。
なお、目安光熱費の算出に用いた燃料単価や設計二次エネルギー消費量については、ラベルの視認性を確保する観点から、ラベル上には掲載をしていないため、別途、評価書等により消費者等に対して情報提供が行われるよう、留意する必要があります。

③複合建築物(棟単位)

複合建築物の棟単位の性能の表示に用いるラベルとして、再エネを考慮した一次エネルギー消費量の多段階表示を行わない場合は別記様式第3(表示様式)を、行う場合は別記様式第6(再生可能エネルギー表示様式)をそれぞれ用いることとしています。
複合建築物のラベルでは、「ZEH水準」「ZEB水準」や「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)」の達成状況についての表示は行わなれません(これらは住宅部分または非住宅部分の性能により判定されるため)。
複合建築物においてこれらの表示を行いたい場合には、当該建築物を住宅部分と非住宅部分に区分し、それぞれの性能について①非住宅建築物のラベルと②住宅のラベルを用いて表示することとなります。

Y.ラベル表示の手順

全体の流れ

  • 建築物の販売・賃貸時の広告等への省エネ性能のラベル表示は、大きく、以下のような流れで実施します。
ラベル表示の手順 全体の流れ

出典:省エネ性能表示制度事業者向け概要資料

優良誤認等の不当表示を防止するための対応等

1. 複数住戸(住棟)の広告

共同住宅や戸建住宅の多棟現場の広告を行う際等において、特定の住戸の省エネ性能を表示することにより、他の住戸においてもそれと同等以上の性能が確保されている等の誤認を生じないよう配慮した表示を行う必要があります。

複数住戸(住棟)の広告

出典:省エネ性能表示制度事業者向け概要資料

2. 表示後に省エネ性能の変更が生じた場合の対応

建築物の計画変更等により多段階評価の性能が低下する変更が生じた場合であって、引き続き表示を行う場合は、  速やかに変更後の仕様に基づく性能を表示したラベルへの修正を行う必要があります。
当初の表示時点の仕様から仕様変更する内容によって、省エネ性能に影響が生じる可能性があるため、販売・賃貸事業者から購入者等に対して、当初の表示時点の省エネ性能から変更が生じうることについて情報提供することが必要です。

表示後に省エネ性能の変更が生じた場合の対応

出典:省エネ性能表示制度事業者向け概要資料

3. 過去に使用したラベルの再使用

新築時に販売・賃貸時のラベル表示が行われた後、当該建築物が再度販売・賃貸される場合、ラベルを発行した時点から、建築物の計画や仕様に変更が生じている可能性があるため、必要な確認を行う必要があります。

過去に使用したラベルの再使用

出典:省エネ性能表示制度事業者向け概要資料

4. 表示の根拠となる資料の保管等

販売・賃貸事業者においては、表示する省エネ性能の根拠となる情報について、関連資料の保管等の措置を講じる必要があります。