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2025年4月 建築物省エネ法適合性判定の手続き拡大

2024/12/19up

2020年10月、国の方針として「2050年カーボンニュートラル」の宣言がなされました。最終エネルギー消費の約3割を占める民生部門(業務・家庭部門)の活動が展開される住宅・建築物において、省エネルギー化や脱炭素化に向けた取り組みの一層の充実・強化が不可欠です。
中期的には2030年、長期的には2050年を見据えて、今後脱炭素社会の実現に向けた住宅・建築物におけるハード・ソフト両面の取り組みと施策が展開される予定です。

1.2030年までの流れ

2030年までに新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されているとともに、新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入されていることを目指す、としています。
2030年度以降については以下の目標が設定されています。

①新築住宅:ZEH基準の省エネ性能(強化外皮基準および再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から20%削減)に適合させること

②新築建築物(非住宅):ZEB基準の省エネ性能(再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から用途に応じて次のとおり削減)に適合させること

  • ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所等:現行の省エネ基準値から30%削減(BEI=0.7)
  • 事務所、学校、工場等:現行の省エネ基準値から40%削減(BEI=0.6)
  • 小規模建築物:現行の省エネ基準値から20%削減
イメージ画像:2030年までの流れ

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

2.2025年4月:建築物省エネ法適合性判定の手続き・審査の合理化開始

2022年6月に建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号。以下「建築物省エネ法」)が改正され、2025年4月から省エネ基準適合義務の対象が大幅に拡大します。

2025年には原則、すべての住宅・建築物を新築・増改築する際は「省エネ適合基準」が義務化されます(適用除外があります)。代わりに現在、中規模以上の住宅に適用されている届出義務制度および小規模住宅・非住宅に適用されている建築主に対する説明義務制度は、省エネ基準適合義務制度開始以降(2025年4月以降)は廃止されます。

イメージ画像:省エネ基準適合義務の対象について

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

3.省エネ基準適合義務制度の適用開始時期

省エネ基準適合義務制度は2025年4月(令和7年4月)以降に工事に着手するものから適用されます。

イメージ画像:省エネ基準適合義務制度の適用開始時期

確認申請を申請して、2025年3月末日までに確認済証の交付を受けて、4月以降に着工する場合は完了検査時に省エネ基準適合を確認する必要がありますので、完了検査までに省エネ適判を受けて頂く必要があります。省エネ基準への適合が確認できない場合、検査済証が発行されません。

また確認申請を申請したものの、2025年3月末日まで確認済証の交付を受けられなかった場合、4月1日以降に省エネ適判等で省エネ基準適合を確認できなければ、確認済証が交付できませんので、ご注意ください。

確認申請から確認済証の交付までには一定の審査期間が必要です。このため、2025年4月前の着工を予定する場合は、余裕をもって建築確認申請をしてください。

省エネ基準への適合を確認するためには、新3号建築物を除き、エネルギー消費性能適合性判定(省エネ適判)を受ける必要があります。
省エネ適判を行うことが比較的容易な特定建築行為に該当する場合(住宅に限る)は省エネ適判を省略し、建築確認審査と一体的に省エネ基準への適合を確認します。

イメージ画像:省エネ適判

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

4.建築物省エネ法適合性判定適用の除外

省エネ基準への適合性審査の適用除外は以下になります。

①10u以下の新築・増改築

②居室を有しないことまたは高い開放性を有することにより空気調和設備を設ける必要がないもの

③歴史的建造物、文化財等

④応急仮設建築物、仮設建築物、仮設興行場等

4-1.新3号建築物とは

都市計画区域・準都市計画区域の外の建築物で、建築確認の対象外の建築物(第12条改正)
(平屋かつ200u以下)

イメージ画像:都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区等外

都市計画区域・準都市計画区域の内の建築物で、建築基準法における審査・検査省略の対象である建築物(第11条第2項改正)かつ、建築士が設計・工事監理を行った建築物(平屋かつ200u以下)

イメージ画像:都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区等内

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

4-2.省エネ適判を行うことが比較的容易な特定建築行為とは

イメージ画像:省エネ適判を行うことが比較的容易な特定建築行為とは

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

4-3.省エネ適合性判定を要しない仕様基準

仕様基準を用いるなど、審査が比較的容易な場合について2022年11月に基準の見直しがありました。
仕様基準を用いれば省エネ適合性判定は不要となります。仕様基準の見直しポイントは以下のとおりです。

  • 外皮面積の計算は不要、断熱材・開口部の性能値のみで判断可能です(外皮面積に占める開口部(窓・ドア)面積の割合の区分を廃止)。
  • RC造の戸建住宅、木造の共同住宅にも対応した外皮の仕様基準が新たに設定されています。
  • 一次エネルギー性能基準について、設備ごとに効率値等の基準を満たすものを選択すればよく、計算は不要です。
  • 給湯設備にエコキュートを追加するなど、対象設備の種類が拡大されました。
イメージ画像:省エネ基準への適否の確認方法

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

4-4.設計住宅性能評価書、長期優良住宅建築等計画の認定または長期使用構造等の確認等の活用

省エネ適判機関の審査負担軽減のため、設計住宅性能評価書等を活用した場合の省エネ適判の審査を合理化しています。
コース1:設計住宅性能評価書等を受けた場合の省エネ適判の省略
コース2:省エネ適判と設計住宅性能評価等を併せて受ける場合の省エネ適判に係る添付図書の合理化

イメージ画像:コース1とコース2の説明

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

4-5.フラット35SやBELS等の場合の審査の合理化について

省エネ適判機関が、同一の建築行為について省エネ適判および評価等※を行う場合、機関内で調整の上で、合理的に省エネ適判を行うことが可能です。
同一の建築行為について、省エネ適判通知書を交付した省エネ適判機関と同一の機関に対して、BELSに係る評価申請を行う場合、省エネ適判通知書等を用いることにより、BELSに係る申請図書等を省略することが可能です。
フラット35Sの適合証明機関と同一の機関が交付した省エネ適判通知書等により、フラット35Sの省エネ性能を確認できる場合にあっては、フラット35Sにおける省エネ関係の検査を省略することが可能です。

イメージ画像:フラット35sにおける検査の合理化

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

5.省エネ基準への適合審査の流れ

省エネ適合性判定が必要な場合と、判定を要しない場合で、審査の流れが異なります。
外皮基準と一次エネルギー消費量基準への適合を仕様基準等により評価する場合、通常の建築確認の手続きの中で省エネ基準適合を確認します。

イメージ画像:省エネ基準への適合審査の流れ

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

5-1.省エネ性能の評価方法

省エネ性能の評価方法は、「仕様基準(住宅のみ)」と「WEBプログラム」「外皮性能の計算プログラム(住宅用)」が用意されています。
仕様基準は簡単に評価できるものの、基準に定められていない仕様の省エネ性能は評価されません。
一方、WEBプログラム等は評価が比較的難しいものの省エネ性能を詳細に評価できます。

イメージ画像:省エネ性能の評価方法と特徴

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

5-2.省エネ適判に必要な図書

省エネ適判を受けるためには、以下の設計図書の提出が必要です。

イメージ画像:省エネ適判に必要な図書

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

5-3.省エネ適判の申請、建築確認申請(提出図書)

省エネ適判を受けている場合は、省エネ適判機関から発行される省エネ適判通知書を建築確認申請を行っている建築主事等に提出してください。仕様基準により省エネ性能を評価している場合は、外皮の仕様や省エネに係る設備機器等の情報を記載した設計図書を建築確認申請図書に含めてください。
省エネ適判機関から発行される省エネ適判通知書が建築確認申請を行っている建築主事等に提出されない限り、建築確認の確認済証が発行されず、着工できませんのでご注意ください。

イメージ画像:必要図書の整理(省エネ関係)

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料 令和6年9月」

5-4.計画変更手続きと必要書類(省エネ適判関係)

省エネ適判申請を行った後、完了検査までの間に計画に変更があった場合は、省エネ適判の再実施または軽微変更手続きを行うことが必要です。

イメージ画像:計画変更があった場合の手続きと書類(省エネ適判)

※1 外皮各部位の面積が変わらない場合に限る。

※2 変更内容の概要を記載し、根拠資料を添付。

※3 再計算後も引き続き省エネ基準に適合することを確認した証明書。所管行政庁または省エネ適判機関が発行する。

※4 完了検査では、建築確認や省エネ適判に要した図書等の提出も必要。

再計算により、建築物エネルギー消費性能基準に適合することが明らかな変更(ルートC)で「軽微な変更該当証明書」が必要になった場合、再審査となり、審査手数料が発生します。ご注意ください。

 

出典:
国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法改正法制度説明資料 令和6年9月」
国土交通省「木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック(4〜7地域版)」
国土交通省「【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について」
国土交通省「建築物省エネ法について」