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避難安全検証法《避難計画について》

2022/11/17up

はじめに

従来、避難関係規定として、一定規模以上の建築物については、平均的な建築物の形態などを想定し、居室の各部分から階段までの歩行距離、高層区画、避難施設、内装制限等の規定を設け、建築物一律に避難関係規定に適合することが求められていました。
建築物に関する火災安全工学などの進展により、火災が発生した場合に避難の安全性を予測し、避難経路の各部分において在館者の避難が終了するまで煙やガスにより危険な状態とならぬよう、避難安全性能を検証する方法が建築基準法に導入されました。これにより従来の仕様書的基準に加え、性能規定によっても個々の建築物に即した避難計画が確認できるようになり、設計者の選択肢が広がりました。

避難計画について

■避難安全検証法を検討する際の留意事項

建築基準法において定めのない事項ですが、防災計画、避難計画の原則を守ることが重要です。避難安全検証法は、煙降下時間と避難時間の比較ですが、避難安全の確保には、2方向避難の確保、避難方向の分かりやすさ、過度の避難者集中の防止なども重要です。法令の規定を満たすことはもとより、建築主およびその施設を利用される方のためにも、避難計画に考慮し、安全性の高い建築物を提供していく姿勢を持って、設計業務に取り組むことが必要です。

①2方向避難について

  • 火災の影響により避難出口の一方向が何らかの理由で避難不可能となった場合でも避難可能な、複数の避難経路(出入り口)を設ける
  • 廊下等の端部が行き止まりになるような経路を極力避け、階段等の避難施設をバランスよく配置し、安全区画内に避難できるよう計画する

②避難方向の分かり易さ

  • 不特定多数の人の日常動線を考慮し、避難計画をする

商業施設(物品販売店、遊技場)などの不特定多数の在館者が想定される場合、表1のような動線傾向があります。
エレベーターホールや便所などへの経路に近接した位置に階段を設けるなど、避難の分かり易さに対する配慮が必要です。

表1 商業施設(物品販売店、遊技場)などの不特定多数の在館者の動線傾向

知っている経路を使う 日常的に利用している廊下や階段を使って避難しようとする。
入ってきた経路を戻る 百貨店、劇場、ホテルなどのように、よく知らない建物や初めて訪れた場所では、入ってきた経路を戻って避難しようとする。
明るい方向へ向かう 明るい方向を目指して避難しようとする。煙が漂う廊下では、暗い方向より明るい方向が安全と考えて、その方向を選択する。
開かれた方向へ向かう 狭い廊下より広い廊下、ホールの方へ避難しようとする。
安全な外部へより近づくと考えて、その方向を選択する。
目につく方向へ向かう 最初に目に付いた経路、よく目立つ経路から避難しようとする。
安全な外部へより近づくと考えて、その方向を選択する。
近い経路に向かう 最も近い出口や階段から避難しようとする。早く避難しようとするときは顕著であるが、気がつかなければ遠くの経路を選択する。
他に追従する 周りの人が避難する方向と同じ方向に避難しようとする。

③建築設備等の配慮

  • 火災時に天井付近に滞留する煙を攪拌し、排煙効果および蓄煙降下を阻害しないよう、自動火災報知器等と連動して換気・空調設備を停止する等、建築設備に対する配慮をする

④排煙口の位置

  • 煙が避難方向と逆の方向に流れるように考慮する
  • 誘導灯を認識しやすく、避難方向を分かりやすくするために、煙が避難出口に近接しないよう計画する

⑤ソフト面について

  • 設計者から建築主への説明を十分に行い、安全性能が継続するよう指導することが重要です
    1. 適正な維持管理(例えば、避難経路となる部分には、避難の障害となる物が置かれることのないよう管理する等)
    2. 避難時の対応(従業員等による初期避難誘導)をし、安全性をより高いものとすること
    3. 完成引き渡し後の間仕切りの変更、室の用途の変更に伴う再検証の必要性について建築主の理解を得ること

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