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避難安全検証法《確認検査で質疑の多い事項》

2023/1/16up

1.設計図書(意匠図)と検証法計算での不整合

避難安全検証法では、通常の設計であまり必要としない防火性能の内装仕上げや開口部、天井高さ等を設定することがあります。意匠図の作成者と検証法の計算書等の作成者が異なる場合などは、図書相互の不整合が発生しやすい部分となります。不整合の多い状態では、本来の検証法の審査に進むことができません。図書等の作成時には十分ご注意ください。

【不整合の多い項目の具体例】

  • 間仕切り(プラン)
  • 開口部の数
  • 開口部の防火性能
  • 開口部の寸法
  • 天井の高さ
  • 内装の仕上げ材
  • 各室の面積

2.煙降下時間の算定にあたり、火災室の限界煙層高さ「Hlim」と「非火災室の煙発生量」の開口部仕様の混同

限界煙層高さHlimは、「常閉防火設備または煙感知連動の防火設備」により開口部中心までの高さとすることができます。一方、「熱感知器連動の防火設備」(令第112条19項一号性能)では、Hlimを開口部上端とする必要があります。これを混同される理由の一つとして、同じく開口部の構造により決定する非火災室の煙発生量の算定と類似していることが考えられます。

※防火戸の計画では、遮炎と遮煙の2つの性能が要求され、火災室で発生した煙やガスの伝播経路に設けられる開口部がどのような性能を持つかにより大きく異なり、数値では10倍の違いがあります。避難安全検証法において、開口部の遮煙性能はとても重要な部分になります。

3.令第121条第3項(2以上の直通階段の重複距離)

階避難安全検証法の適用により、令第120条に定める「直通階段までの歩行距離」の適用を受けなくなることによって、適用除外とならない2以上の直通階段における重複距離の部分が、平面計画上で適合していない場合があります。

4.令第128条(敷地内通路)

検証法で、避難出口としている開口部からの避難経路の幅1.5mが確保されていない場合があります。この条文は避難安全検証を行なっても、適用除外を受けることができません。

※階数が3以下で延べ面積が200u未満の建築物の敷地内にあっては避難経路の幅0.9m

5.平面形態が複雑な時(煙伝播経路が多岐にわたる場合)の煙降下時間算定

検証法の煙降下時間は、開口部の性能※1に大きく依存するため、火災室からの煙伝播経路となる室の数では確定的な判断ができません。 最短伝播経路のみを検討している場合がありますが、一通りの伝播経路について検討する必要があります。

※1 一号扉、二号扉、その他扉

下の図では、必ずしも①<②とはいえないことになります。

参考画像:平面形態(煙伝播経路が多岐にわたる場合)が複雑な時の煙降下時間算定

6.給気口の設置

機械排煙の計画において、令第126条の3(排煙設備の構造)では、給気口の設置は定められていませんが、避難安全検証法での機械排煙設備では、給気口の設置が必要となります。

7.検証法図書の添付について

添付されている避難安全検証法の計算部分については、多くの場合計画の諸条件等を入力することにより、自動的に計算結果を表示するようなプログラム等を用いて作成されます。提出される計算書の中には「条件設定値」と「避難時間と煙降下時間」の結果のみが出力され、添付されている場合があります。規則1条の3にも「避難安全検証法により検証をした際の計算書」との記述がある通り、途中経過を含めた計算根拠の確認が必要となります。提出する際は、省略していない計算書を添付してください。

8.消防指導との関連

避難安全検証法を適用し無排煙とした計画の建築物であっても、消防排煙が必要な場合があります。計画時には、建築主事や指定確認検査機関のみならず、消防との事前打ち合わせを行い確認することが必要です。

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